現在の私の仕事は約7割が「英訳」
現在の私の仕事において、英→日と日→英の割合は3:7ぐらいで日英が多いです。
愛知県を中心とした東海地方の企業からの受注を中心にしていると、「日本語資料の英語版作成」というニーズが高くなります。海外展開しているメーカーが多い、この地方ならではの特徴だと思います。
私たち日本人の書く英語は、英語を母国語とするネイティブに見せれば、細かいところをあちこち直されるような英語かもしれません。しかし、日本語を母国語とするからこそ、原文の理解においては有利であることは間違いありません。
本来はターゲット言語に訳すのが原則
海外の翻訳業界では、「母国語をターゲット言語(訳出後の言語)とする翻訳」を原則としています。日本人の場合でいうと、
・外国語である「英語」から、母国語である「日本語」へ訳す
ことしか求められていないことになります。
これは「表現レベル」において母国語のレベルを要求しているからです。ただし訳し上がった成果物がいくら美しくても、原文の英語を正確に伝えていなければ本来は翻訳としての意味がありません。
不実な美女か貞淑な醜女か
この点において「日本語から英語」方向への翻訳をする場合、
➀日本人が訳すと日本語原文の読み取りは正確だが英語での表現力が不足
②英語ネイティブが訳すと英語での表現力は高いが、日本語原文の読み取り能力が不足
という二択に迫られることになります。
一番いいのは➀+②の第3の選択肢、
③日本人が訳した英語を英語ネイティブがリライトする
という方法ですが、2人の手を介するために時間とコストがかかることは避けられません。
そこで限られた時間と予算の中、➀と②のどちらを重視するかという場面で、技術翻訳においては➀が選ばれることが多いという訳です。
ロシア語通訳者の米原真理さんの『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』というエッセイのタイトルにあるように、多少のアラには目をつむっても内容の正確さを取るか、内容の正確さを犠牲にして英文としての洗練度を取るか、というのは翻訳依頼主の永遠の課題です。
ですから、英語ネイティブのように文法ミスがゼロで洗練された英語を書けないからと言って、翻訳者として需要がない訳ではありません。現に私の仕事の7割近くが英訳であるように、日本人翻訳者の手による英訳需要は、実際のところかなりあります。
日本語ネイティブとしての「和訳」
一方、残りの3割は主に海外のエージェント経由で「英日」翻訳をしています。
こちらはまさに上に述べた通りの理由で、日本人として「日本語のナチュラルさ」を求める依頼主から仕事を受注しているという訳です。
また、非日本語ネイティブが訳した日本語を、「ネイティブチェッカー」として直す仕事もあります。
ワード単価は最初から日本語に直す仕事の約半分ですが、かかる時間もおおよそ半分程度なので、時間単価としてはほぼ同程度になります。
「英語っていつまで勉強していても難しい」「むしろ勉強すればするほど難しいと感じる」我々日本人翻訳者にとって、「日本語ネイティブ」であることがこれほど求められる場面もないでしょう。
どちらの仕事も楽しいです。作業している時は、脳の別の部分を使っているように感じます。
両方の仕事をバランスよく引き受けていると脳の疲労度も軽減される気がします。
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