2020年9月15日火曜日

情報商材の悪質さは買ったことがない人にはなかなか理解しづらい

 情報商材というのは1度でも買ったことがある人しかその悪質さについて本当には理解できないと思うのですが、実は私はずいぶん昔にアトピーが治るという情報商材を1万円ほどで買ったことがあります。

紙媒体で素人がファイルにはさんだようなものが送られてきたのでもう手元にはなく、おぼろげな記憶でしかありませんが、一言でいうとマクロビオティックのような食生活を推奨する内容でした。

当時の私はわらにもすがるような思いでしたし、1万円も払ったのですから「貴重な情報であるに違いない」と思って一時期かなり忠実に実行していました。もちろんアトピーは治りませんでしたし、その後、問題のひどい症状は大病院の皮膚科で診察してもらって一般的な西洋医学による治療で緩解しました。(※マクロビオティック自体を否定するわけではありません。アトピー性皮膚炎との関連性の科学的根拠に疑問を持っているだけです。)

結局1万円も出したのに私にとっては全く無価値な情報でした。

そして中でもよく覚えているのはその情報商材冊子の冒頭に「この情報を書籍ではなくこういう形で出すのはこれが医学界では異端とされている内容だからだ。これを実名で世の中に出すと医学界の中で困る人がいる。だからこの情報を流していることがばれると自分は消される」みたいなことが書いてあったことです。

今思い出すと自分が恥ずかしいのですが、その冒頭の一文 (3文?)によって、なおさら私はその情報を一時期にせよ盲目的に信じました。「世の中におおっぴらに広まってはまずい秘密なんだ。だから高いんだ。みんな知らないんだな」と自分が特別扱いしてもらったような気分になりました。卵もダメだったので、当時友達の出産祝いに出かけた際に持っていった手土産のプリンを、自分の分だけゼリーにしたことを覚えています。

冷静になれば分かりますが、マクロビオティック的な情報は、書籍で出している人がいくらでもいます。一冊1500円程度から高くても数千円です。そこを通常の5倍以上の値段で、しかもページ数はペラペラのものをもったいぶって売り付ける訳ですから、開いてしまった人にも文句を言わせないように、「これは買ってくれたあなただけが知ることができる特別な情報なんですよ」という(これまた)誤情報を冒頭に投下しているのです。

医学界の王道から外れる考えだったとしてもまさかそれで著者が命まで取られるわけはないですし、例えば糖質制限のような考え方だって医学・栄養学の中心的な考えからは外れていても江部康二先生のような医師が顔出し・名前出しで出版もテレビ出演もしています。

ですから商法商材の冒頭のような文句は、非常識な値段で中身のない情報を売るための言い訳なのです。

情報商材と名のつくものはおそらくほとんどがこの原則に当てはまります。何らかの形で「これは世間一般の常識とは外れる手法です。だから高額なのです。口には出さないけれどみんなこれが真実だと知っている。私の情報の方が真実なのです。買ってくれたあなただけが知り得る情報ですから他には出さないで」という主旨のことを言ってきます。

そうやって購入者を特別扱いすることで高額な買い物をしてしまったことへの後悔と罪悪感をやわらげ、さらには自尊心をくすぐるのです。しかし、いずれは気付きます。これは誤情報だったのだと。自分は騙されたのだと。しかし、情報商材の多くは「そんなわけあるはずないじゃないか」というシロモノなので、つかまされてしまった人の多くは被害を身近な人に相談できません。

それでも戦う勇気をもって販売者に返金を迫る人もいますが、多くは泣き寝入りです。それどころか、「サンクコスト(埋没費用)」バイアスで冷静な判断ができず、情報の販売者を教祖のように崇めて盲目的に信じようとする人まで出てきます。

私は1万円の被害で済みましたがもっと悪質になると30万円、50万円という高額になります。アトピーが治ります、シワが取れます、白髪がなくなります、痩せます、女性にモテます、結婚できますなど、その人が今一番悩んでいるところをピンポイントで押してきます。中でも一番悪質なのが「儲かります」系の商材です。

生活の根幹にかかわるお金の問題をダイレクトに解決する手段ですから、当然欲しい人は多くなります。株、FX、アフィリエイト、プログラミング、ウェブデザインなど。一般の人にはどうやって儲かるしくみなのかよく分からないものだというのがポイントです。ここに今回、翻訳の情報商材が加わりました。

中に入ったことはないので私も詳しくは分かりませんが、おそらく上のようなことが行われているのだろうと思います。経歴詐称も試験での不正行為も、本当は誰もやってませんが「実はみんな隠れてやっている。自分の語ることが真実だ。周りの雑音に流されずに自分だけを信じて付いてこい」というようなことを平気で言っていると思います。

信者になってしまったら宗教と同じで周りの人が簡単に抜けさせることはできません。しかし、騙されてしまった人も、落ち着いて考えればまだ引き返すことはできます。悪質な「教祖」に騙されて人生の大切な時間とお金をさらに無駄にする前に、冷静になってください。

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