2024年3月29日金曜日

キラキラ広告 翻訳詐欺まがい講座のこれまでの型

 キラキラ広告 翻訳詐欺まがい講座のこれまでの型

(全部同じなのでどれかひとつを特定していません) 1) 英語力が低くても(またはゼロでも)翻訳者になれるという広告がバンバン流れ、LINEに誘導される 2) 入会後、キラキラ系の広告塔役講師が会員にオリエン的なことをやる(実際の添削指導はバイトがやる) 3) 当初謳われていた募集人数くらいの入会者のうちは比較的それなりの指導をする(でも金額には見合わないショボい指導) 4) 募集予定人数を超えても締め切らず入会者が膨れ上がる 5) 数十人のはずが数百人規模まで増えているのに講師の増員が追いつかない(慌てて募集するも人材確保できず) 6) 質問の回答も課題の添削も返ってこなくなる 7) 配信動画も遅れがちになる 8) この辺から異変に気付く会員が出始める 9) 不満を言う会員は「ネガティブな発言はしないでください!」と運営からつまみ出される 10) 不審に思った会員たちがインターネットで評判などを調べ始める 11) 私が書いているブログなどに行きつく 12) やっぱり詐欺まがいだったのか!と気づく 13) 私にDM等でコンタクトしてきた人 →救済措置へ案内(今ここ) 1)から13)までのサイクルがだいたい半年ぐらいです。 毎回このパターンです。いつも同じ。

上記のような翻訳詐欺まがい講座の被害に遭ってしまい、返金されないなどのトラブルに見舞われている方は、遠慮なくJAT(日本翻訳者協会)の「詐欺まがい講座対策委員会」までご連絡ください。連絡先メールアドレスは

sagimagai@jat.org

です。

2024年3月8日金曜日

【#AI英語ライター 養成講座】#宇田悦子 疑わしい英語関連講座の見破り方 Vol.2

いったい何匹目のどじょうを狙うつもりなのでしょう。

AIを使えば「英語力不問」で稼げるという講座がまた出てきました。少し前にも「AI翻訳アカデミー」という講座が出現して800人を超える被害がでました。味をしめてまたAIをネタにしてきたようです

今度はAIを使った英語ライティングの講座だそうで

宇田悦子氏による 【AI英語ライター養成講座】です。



現在までに観測されている同講座の広告は以下の2つのページです。

https://aieigowriter.com/aieigo/01/(「無料動画」をエサに [実際はただの宣伝] LINE登録へ誘引するページ)

https://aieigowriter.com/letter/f/pre/#(募集開始までもったいつけて申し込みを煽るページ)

(運営がこれらのページを削除したりURLを変える可能性があります。URLが無効になったらその都度修正する予定ですが、変更についていけない可能性もあるのでご了承ください)


【過去にもあったさぎまがい講座と同じ】

 この講座も、塩貝香織氏のAI翻訳アカデミーと同じく2019年から2020年にかけて問題になった講座と同類の販促業者が後ろで糸を引いているとみられる講座です。

 以前問題になった講座については2020年2月25日火曜日のこちらの記事の記事と2020年11月7日土曜日のこちらの記事の記事をご参照ください。

 私がこのように「同類の業者が広告制作や企画を請け負っている」と考える根拠は次の4つです。

1. 広告ページの特徴がこれまでにもあったさぎまがい講座の広告に酷似している

 ・英語を使用する仕事なのに「英語力不要」もしくは「高い英語力不要」と謳っている

今回の「AI英語ライター養成講座」

塩貝香織氏の「AI翻訳アカデミー」


坂口雅志氏の「グローバルトランスレーションアカデミー」(現在は消滅)
(中高生レベルの英語力を収入に変える魔法、と謳っている)



浅野正憲氏の「在宅翻訳アカデミー」(現在は消滅)
(高い英語力・学歴・高度なパソコンスキル一切不要、と謳っている)

・「定員に達したら締め切る」と謳っているのに実際には締め切らない


(今回の講座はまた募集が始まっていないので確定的なことは言えませんが、これまでの例では定員を締め切っても受講生を受け入れ続けていました。今回もおそらくそうなるでしょう。20人や30人の定員で締め切っていてはこの派手な広告を制作している業者が儲からないからです)

・「無料プログラム」と謳い、LINEに誘導するが実際の手法を無料で教えることはなく、結局高額な有料講座へと誘導する構造になっている

・動画は一度ではすべて見られない。多くが第1回から第4回まで引っ張る

・動画を最後まで見終わると次は「講座代金をなかなか教えない」ページに誘導

・価格のページに飛んでもすぐには申込できない。(「募集開始」までもったいつけて待たせる仕掛け)




 ※これらは情報を小出しにすることにより消費者の「早く申し込みたい」という気持ちを煽る、典型的なプロダクトローンチ手法です。

2.講座の料金が同じ(しかも高い料金を提示して「初日申込特典で」割引になると言っているが実際は常に割引後の値段。いわゆる二重価格表示


3.以前問題になった坂口雅志氏の「グローバルトランストランスレーションアカデミー」と同じ業者がクラウドワークスで女性の似顔絵を発注している。



4. 講座の主宰者本人が書いているとはとても思えない、おかしな日本語が目立つ




【さぎまがい講座の広告のウソとホント】

 この手の講座に騙される人が後を絶たないのは、誇大広告の中にも一部、本当のことがちりばめられているからです。詐欺師は嘘の中に一部本当のことを混ぜる、とはよく聞く話です。

例えば、この宣伝の中の


「元の文章の意味を読み違えていたら正しく翻訳」できない、というのは本当のことです。

技術者などが書く日本語が翻訳者にとって分かりにくいというのはよく言われていることですが、それは当事者同士だけが分かる専門用語などが頻出するからです。このような高度な技術的内容を含むこともある日本語原稿を正確に読み解いて英訳するには、背景知識や日本語の行間まで読み取る読解力が必要であることは事実です。

しかし!



これは永らく翻訳に携わっている英語ネイティブの日英翻訳者に対して大変失礼な発言ですね。英語ネイティブのプロの日英翻訳者は、もちろん日本語の細かなニュアンスを理解して翻訳されています。日本語で伝えたいことのニュアンスをいちばん正しく伝えられるのは日本人だと断言するのは思い上がりだと思います。

 では英語圏の文化をいちばん正しく伝えられるのはイギリス人かアメリカ人だということになりますが、英日翻訳をイギリス人やアメリカ人がやっているでしょうか?

【高い英語力が必要ないというのは嘘です】

一連のさぎまがい講座の最大の訴求ポイントであり最大の嘘は「英語力が必要ない」もしくは「高い英語力は必要ない」と謳っていることです。



 AI時代にAIをうまく使いこなすのは「リサーチスキル」を高めるために必要な素養ですが、たとえAIを使ったとしても一定以上の英語力がなければ翻訳できません(英日・日英どちらにおいてもです)。

 AIの出力には間違いが含まれます。講座では原文をプリエディットしてからAIに翻訳させるという手法を教えるようですが、プリエディットした後にAIに翻訳させたからといって必ず正しい翻訳結果が出力されるとは限りません。もちろん、正しい翻訳結果になることもあります。では、その出力が正しいかどうかは誰が判断するのでしょう?

 宣伝動画では「プロの翻訳者にチェックしてもらえるから安心して取り組める」などと説明されていましたが、講座を卒業した後はどうなるのでしょう?仮に「英語力不要」の謳い文句を信じて本当に英語力ゼロの人が受講した場合、数か月や半年の間、少しばかりAIツールの使い方を習い、その後講師に訳文を数回添削してもらった程度で、AIの出力が正しいかどうかを毎回判断する力は本当に身につくのでしょうか?

 まさか、これから30名どころか100名、200名を超えても応募を締め切らないであろう講座の受講生全員に、卒業後も元受講生らが受注する案件すべての英文を、講師たちが永久にチェックし続けてあげるとでも言うのでしょうか。おそらくそんなことは不可能ですよね

 「英語力不要」と言っても、自分が訳したい分野の日本語原文をAIで英訳し、その英語が正しいか間違っているかを受講時点で判断できない英語力の人は、おそらくこの講座を受講しても無駄になるでしょう。

 AIの出力のどこが間違っていて、それがなぜ間違っていると言えるのかなどという細かい説明はしてくれないことでしょう。してくれたとしても、翻訳技術は一般化できません。今日習ったことが明日出てくるまったく別の原文には応用できないので、その都度自分で考える必要があります。

 また、英語の言い回しにも日本語と同じように「ニュアンス」というものがあります。「間違ってはいないけれど、普通こんな風には言わない」とか、「丁寧だけどやたらと丁寧すぎて滑稽、むしろ慇懃無礼な表現だと感じる」という英語がいくらでも出力されます。

 講座の中ではもしかしたら出てきた英語をDeepLなどで「日本語に逆翻訳して精度を確かめる」などという手法も紹介されるかもしれません(これはあくまで私の想像ですが)。

 ですが、上で言ったような「間違ってはいないが妙な言い回し」も、日本語に翻訳したら問題ない日本語に「うまく翻訳されて」しまいます。変な英語を日本語に訳したらうまい日本語になったからといって、その英語が正しいとは限りません。その文脈に即した表現になっているのかは、英語そのものを読みそのまま理解できる人にしか判断できないのです。

AIに「英語の部分を任せる」ことなどできない

 AIを使わなくても英文を書ける人や、すでに日英翻訳を行っている人はこんな講座のいうことは嘘だと分かるでしょうから、この講座に惹かれる人にとってのポイントは「AIを使えば英語の部分がなんとかなるかもしれない」というところだと思います。

 AIは最近ブームで「AIを使えば英語力がなくても翻訳できるのでは?」と考える人もいるかもしれません。確かに、DeepLやGoogle翻訳に代表される機械翻訳、ChatGPTに代表される生成AIは最近ではかなり精度が上がってきています。

 動画の中で説明されているように、特に日本語から英語への翻訳の場合、省略されている主語を補ったり文脈に大きく依存している文章に説明的な文章を付け加えることで(プリエディットすることで)かなり正確な翻訳が出力される確率は高くなっています。しかし、100パーセント正しいという保証はありません。

 たとえわずかな確率であっても間違いが混入している場合、その間違いは誰が検出するのでしょう?

 だいたい合っていると思われるけれど、もしかしたら間違いが含まれているかもしれませんという成果物を、誰がお金を出して買うのでしょう?

【一般的な翻訳者だってChatGPTくらい知っている】

 それから、動画の中では私たちのような職業翻訳者があたかもAIなど触ったこともないような古い人間のように語られていますが、私たちだってChatGPTくらい触ったことはあります。仕事で提供された原文をそのままChatGPTに入力することは(データ流出の可能性という観点から)守秘義務に抵触する可能性があるので実際の業務には使わない人がほとんどだ、というだけです。

 私も辞書に載っていない特殊な言い回しについて調べるときや、初めて扱う分野の背景情報を収集したいときにChatGPTを使うことはあります。原文の翻訳作業そのものではなく、リサーチに生成AIを使っている翻訳者は少なくないと思います。

 この手の講座の宣伝ページを制作しているライターに言いたいのですが、私たち翻訳者を古臭いアナログ人間みたいに言うの、いい加減にやめてもらえます?

この講座への入会を検討している方へ。

 AIを使えば比較的精度の高い英文が生成されるのは確かですが、実際に契約したクライアントからAIの使用を禁止されたらどうしますか

 また、ChatGPTは使用者が多いとき、たびたびサービス停止になります。例えばこの記事を書いている3月8日時点でChatGPTがブラウザから使えないという症状が出ています。Xを見ると同じ症状が出ている人も多いようです。便りにしているChatGPTが使えないときに明日までに納品しなければならない仕事があったらどうしますか

 AIを使って生成した英文が合っているか間違っているか、その検証については、講座を卒業した後はどうするつもりですか?短期間でそこまでの英語力を養成できると本当に考えていますか?

 


この「特定商取引法に基づく表記」にも書かれている通り、原則的には返金しないスタンスですから返金交渉の際は精神的にもかなり追い込まれることになります。

よく考えてから決めてください。

2024年2月16日金曜日

それでもまだAI翻訳アカデミーを受講すれば英語力ゼロでも翻訳で稼げるのではないかという希望が捨てられない方へ

それでもまだAI翻訳アカデミーを受講すれば英語力ゼロでも翻訳で稼げるのではないかという希望が捨てられない方へ

というタイトルでnote記事を書きました。業界で騒がれている講座の、どこがどうまずいのかを解説しました。よろしければお読みください。


https://note.com/officeykr/n/nd53a198b2116