いったい何匹目のどじょうを狙うつもりなのでしょう。
AIを使えば「英語力不問」で稼げるという講座がまた出てきました。少し前にも「AI翻訳アカデミー」という講座が出現して800人を超える被害がでました。味をしめてまたAIをネタにしてきたようです。
今度はAIを使った英語ライティングの講座だそうで
宇田悦子氏による 【AI英語ライター養成講座】です。
●https://aieigowriter.com/aieigo/01/(「無料動画」をエサに [実際はただの宣伝] LINE登録へ誘引するページ)
●https://aieigowriter.com/letter/f/pre/#(募集開始までもったいつけて申し込みを煽るページ)
(運営がこれらのページを削除したりURLを変える可能性があります。URLが無効になったらその都度修正する予定ですが、変更についていけない可能性もあるのでご了承ください)
【過去にもあったさぎまがい講座と同じ】
この講座も、塩貝香織氏のAI翻訳アカデミーと同じく2019年から2020年にかけて問題になった講座と同類の販促業者が後ろで糸を引いているとみられる講座です。
以前問題になった講座については2020年2月25日火曜日のこちらの記事の記事と2020年11月7日土曜日のこちらの記事の記事をご参照ください。
私がこのように「同類の業者が広告制作や企画を請け負っている」と考える根拠は次の4つです。
1. 広告ページの特徴がこれまでにもあったさぎまがい講座の広告に酷似している
・英語を使用する仕事なのに「英語力不要」もしくは「高い英語力不要」と謳っている
・動画は一度ではすべて見られない。多くが第1回から第4回まで引っ張る形
・動画を最後まで見終わると次は「講座代金をなかなか教えない」ページに誘導
・価格のページに飛んでもすぐには申込できない。(「募集開始」までもったいつけて待たせる仕掛け)
※これらは情報を小出しにすることにより消費者の「早く申し込みたい」という気持ちを煽る、典型的なプロダクトローンチ手法です。
2.講座の料金が同じ(しかも高い料金を提示して「初日申込特典で」割引になると言っているが実際は常に割引後の値段。いわゆる二重価格表示)
3.以前問題になった坂口雅志氏の「グローバルトランストランスレーションアカデミー」と同じ業者がクラウドワークスで女性の似顔絵を発注している。
AIを使わなくても英文を書ける人や、すでに日英翻訳を行っている人はこんな講座のいうことは嘘だと分かるでしょうから、この講座に惹かれる人にとってのポイントは「AIを使えば英語の部分がなんとかなるかもしれない」というところだと思います。
AIは最近ブームで「AIを使えば英語力がなくても翻訳できるのでは?」と考える人もいるかもしれません。確かに、DeepLやGoogle翻訳に代表される機械翻訳、ChatGPTに代表される生成AIは最近ではかなり精度が上がってきています。
動画の中で説明されているように、特に日本語から英語への翻訳の場合、省略されている主語を補ったり文脈に大きく依存している文章に説明的な文章を付け加えることで(プリエディットすることで)かなり正確な翻訳が出力される確率は高くなっています。しかし、100パーセント正しいという保証はありません。
たとえわずかな確率であっても間違いが混入している場合、その間違いは誰が検出するのでしょう?
だいたい合っていると思われるけれど、もしかしたら間違いが含まれているかもしれませんという成果物を、誰がお金を出して買うのでしょう?
【一般的な翻訳者だってChatGPTくらい知っている】
それから、動画の中では私たちのような職業翻訳者があたかもAIなど触ったこともないような古い人間のように語られていますが、私たちだってChatGPTくらい触ったことはあります。仕事で提供された原文をそのままChatGPTに入力することは(データ流出の可能性という観点から)守秘義務に抵触する可能性があるので実際の業務には使わない人がほとんどだ、というだけです。
私も辞書に載っていない特殊な言い回しについて調べるときや、初めて扱う分野の背景情報を収集したいときにChatGPTを使うことはあります。原文の翻訳作業そのものではなく、リサーチに生成AIを使っている翻訳者は少なくないと思います。
この手の講座の宣伝ページを制作しているライターに言いたいのですが、私たち翻訳者を古臭いアナログ人間みたいに言うの、いい加減にやめてもらえます?
この講座への入会を検討している方へ。
AIを使えば比較的精度の高い英文が生成されるのは確かですが、実際に契約したクライアントからAIの使用を禁止されたらどうしますか?
また、ChatGPTは使用者が多いとき、たびたびサービス停止になります。例えばこの記事を書いている3月8日時点でChatGPTがブラウザから使えないという症状が出ています。Xを見ると同じ症状が出ている人も多いようです。便りにしているChatGPTが使えないときに明日までに納品しなければならない仕事があったらどうしますか?
AIを使って生成した英文が合っているか間違っているか、その検証については、講座を卒業した後はどうするつもりですか?短期間でそこまでの英語力を養成できると本当に考えていますか?
さぎまがい翻訳講座の見破り方
以下は、これまでに出てきては消えた、複数のさぎまがい講座の主な特徴です
・英語力が低くても(ゼロでも)翻訳者になれると誇大広告している
・お試しレッスンや授業見学の類が一切ない。あるのは宣伝動画内のダミーの受講生の体験談だけ
・LINEのLステップというしくみを使い、申し込みページを開いた瞬間に「あと●日〇時間△分■秒と、カウントダウンが始まる(焦って契約させようとする)
・高額な2種類の講座の価格を提示した後、初回申し込み特典などと言って割引価格を提示する(定価約70万円⇒割引後約50万円、定価約50万円⇒割引後約30万円)【いずれも二重価格表示の疑い】
・人数限定のはずなのに(ほとんどのケースで30名限定だと表示)、当初の予定人数を超えてもいつまでも締め切らず、参加者の数が数百名単位に膨れ上がる。中には千人、2千人を超えるケースも
・結果、少ない人数で大量の受講生の相手をしているのでサービスの質が落ち、質問しても課題を出しても全然返事が来ない
・資料請求のページもなく、講師のプロフィールが一人分しかない(一人で対応できない数の受講生を受け入れている)
・教材の詳しい内容が書かれていない
・翻訳者になった場合のメリットばかりを強調する(デメリットについては言わない)
・翻訳の基本的な知識や技術を教えずに、経歴詐称、もしくは詐称スレスレの「実績の書き方」を勧める
・翻訳は簡単にできるのだとやたら強調する
・翻訳でいくら稼げると、やたらと金額の話ばかり強調する
・ランディングページの一部に札束、または一万円札の画像が入っている。
・講師が自分の年収の話をやたらと自慢する
・講師が過去の実績を実際のクライアントの実名を出して語っている(秘密保持契約違反の可能性)
・契約書や教材を交付しない、または不備がある
・「特定商取引法に基づく表記」欄に「本商品に示された表現や再現性には個人差があり、必ずしも利益や効果を保証したものではございません」という一文、またはそれに類似した文言が入っている。
・「特定商取引法に基づく表記」欄に「インターネットによる通信販売では、特定商取引法に定められたクーリングオフの対象外となります」という一文が入っている
・返金や解約に応じない、または返金条件が異様に(常識の範囲を超えて)厳しい
・講座の中の様子を外部に漏洩した場合、異様に高額の違約金(受講料以上の金額であるなど)が課せられる(違約金の合理性については弁護士などに法律相談してください)
いかがでしたか?あなたが気になっている講座の特徴にいくつ当てはまりましたか?
2023年12月11日(月)に翻訳関連4団体から注意喚起が出ました。被害者の方々の相談窓口として日本翻訳者協会(JAT)内に「詐欺まがい講座対策委員会」が設立されました。私も委員の一員として相談受付に携わっています。JAT会員・非会員にかかわらず無料で相談できます。返金の相談など、詳しくはsagimagai@jat.orgまでメールでご連絡ください。
ご相談・コメントのある方は本投稿のコメント欄に匿名でも結構ですのでお寄せください。本ブログの執筆者である渡邉ユカリに相談したい場合はLINE(@eit4157h)またはX(@yukaringlish)までご連絡ください。SNSを利用していない場合はメールでご連絡ください。
yukaringlishさん、こんばんは。
返信削除記事興味深く拝読いたしました。
英語詐欺まがい情報商材のことはもう他の方もたくさん考えるところがあると思います。
今日は詐欺まがい情報商材について
音楽や動画編集でも類似した講座が散見されることを分かち合いたいと思います。
けー先生のMMC
https://k-sensei.jp/mmc-kobetsu/
平尾俊紀(としのり)のVIDEO LEGENDS
https://komeda.shop/review/2022/11/video-legends.php
という情報商材の説明会に出席したことがありますが
手口がまったくそっくりでした。
LINE登録でカウントダウンで人を煽るところやら
期日を過ぎても募集を続けること
更に安いコースを参加を見送った後に対案してくる不誠実さ
等々。
このブログが被害を根絶する一助となることを切に願っています。
散文失礼いたしました!
コメントありがとうございます。英語界隈以外でも同じような詐欺まがい講座があるのですね。ページの作り方がまったく同じです...。どこの業界にも同じような輩がいるのですね。困ったものです。このブログで少しでも被害を食い止められるといいなと思います。
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