2020年7月30日木曜日

次々と名前を変えながら翻訳講座ビジネスを続ける浅野正憲氏の「在宅翻訳起業コミュニティ」「翻訳の学校」「在宅翻訳アカデミー」の実態

この問題については本ブログでも2月25日の記事に書きましたが、本稿では現在までの経緯を知らない方向けに改めてまとめ直しました。

1.昨年9月から現在までの経緯まとめ  
2.改めて言いますが翻訳の仕事を得るための「魔法」はありません 

1.昨年9月から現在までの経緯: 

まず、ウェブサイトなどを見ても設立年月日など学校の沿革が書かれていませんのでいつから存在していたのか正確には分かりませんが、業界の翻訳者たちが警戒を始めたのが2019年の9月ごろです。「CV詐称」と「トライアルの集団カンニング」が疑われたことによるもので、翻訳会社の関係者が「応募者からの訳文や応募書類が非常に近似している」ことに気づいたことから発覚しました。

当初は「在宅翻訳起業コミュニティ」という名前で「英語力が高くなくても翻訳ができる」「1日1時間の副業で月10万円から初めて年収1千万円も目指せる」などの派手なキャッチコピーで広告戦略を展開し、多くの受講生を集めましたが、同時に翻訳者たちから大いに反発を招きました。高い講座にお金を払わなくても翻訳者になる道は色々あることを示そうと、「#どうやって翻訳者になったか」などのハッシュタグで翻訳者たちが次々に自分の経験を語り始めました。 

当初は浅野氏もTwitterで投稿をしていましたが、ツイート内容も翻訳者たちから見たら疑問に思われるようなことが多く、リプライ欄で多くの批判を浴びていました。次第に浅野氏はTwitterでは投稿をしなくなり、2019年12月初旬にはそのTwitter上で、「CV詐称」「トライアル集団カンニング」疑惑が解消されたことを主張する声明文を発表しました。しかし、その後も受講生や元受業生らから実態を訴える声が相次いでおり、本当に解消されたかどうかは疑問が残ります。 さらに「英語力が高くなくても翻訳ができる」などの問題の謳い文句はその後もウェブサイトから消されることはなく、甘い誘い文句で受講者を募る手法に、翻訳者たちからの批判は続きました。

そして2020年2月ごろ、「訳文分析」と称した動画がSNS上で公開され、この指導内容を見た翻訳者から、講座の内容そのものについても批判が加速しました。 私自身もこの動画を見たことで警戒心を強くした1人であり、2月25日のブログ記事を書くに至りました。 この頃に講座は名称を「翻訳の学校」と変え、さらにテレビ番組への出演や電車内広告などで露出を高めていきました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で在宅でできる仕事への関心が高まったこともあり、入会する人はさらに増え、受講生は1500人規模まで達しました(同ウェブサイトによる自己申告)。 

2月から3月ごろには私もTwitterやブログで「英語力が高くなくても翻訳できる」と謳うことの問題点を集中的に発信しました。 翻訳という仕事を「語学力が高くなくても検索力があればできる」などと繰り返し喧伝するなど、言葉への冒涜であり、翻訳を生業とする翻訳者たちをバカにした発言であると多くの人たちが思い、私の一連の発言も一定数の同意を得ました。 

3月中旬ごろから私のブログ記事のコメント欄に「入会する寸前でした。おかげで助かりました」という旨のメッセージが書き込まれるようになり、検索順位が段々上がっていきました。ついには「浅野正憲」と入れるだけで本家のウェブサイトの次に私のブログ記事がヒットするまでになりました。その間にもTwitterで発信を続けている複数の翻訳者たちのDM受信箱には、受講者や元受講者からのSOSが届くようになったようですが、返金を受けることができたのはごく一部のようです。 

繰り返しになりますが、翻訳者になるための「秘密の方法」は存在しません。高い受講料を払って入会しても役に立つ情報は辞書の設定の仕方くらいで、翻訳の仕方は結局1から自分で勉強し直すはめになるだけです。 業界の翻訳者たちの必死の訴えによって、講座が悪質なものであることはちょっとGoogleで調べれば分かるようになり、徐々に甘い誘い文句に引っかかる人も少なくなってきました。新たなメディア露出や宣伝も見かけなくなり、新規募集活動は少しは落ち着いたのかと思われました。 

しかし、7月下旬。講座はまた改称しました。「在宅翻訳アカデミー」だそうです。運営側から雇われていると思われる提灯持ちたちによる記事にはいいことしか書かれていません。これで翻訳者たちからの批判的なブログは検索に引っかからなくなってしまいました。順調に実績を積み重ねようとする学校が、一年足らずで二度も改称するでしょうか。しかも、新しい名前が出てきた後も、元の名称も引き続き使われています。

これは批判的な発信内容を検索から外すためのSEO対策であることは明らかであり、自分たちの講座に悪評が立っていることは自覚していると考えられます。


 2.改めて言いますが翻訳の仕事を得るための「魔法」はありません 

以前の記事でも述べましたので繰り返しになりますが、英語力が高くなくてもできる翻訳の仕事などありませんし、翻訳の仕事を得るための魔法のショートカットなどはありません。 

現在稼働している翻訳者の皆さんは皆それぞれに勉強と研究を重ね、独自に情報収集して営業努力をして仕事獲得に結びついています。 仕事獲得までのノウハウは何十万円も払わなくても数千円の書籍や業界雑誌で十分な情報を得られます。

件の広告をきっかけに翻訳の仕事に興味を持ったのならせめてGoogleで「翻訳者 なる方法」「翻訳者 勉強法」「翻訳者 求人」などのキーワードで検索してみても良いのではないでしょうか。 

最後に勝間和代さん動画( https://www.youtube.com/watch?v=IzthX8kDok8)からの言葉を引用して結びたいと思います。 

「コンプレックスをもし解消したいと思ったら地道な積み上げしかないんですよ。その地道な積み上げをせずにショートカットを、しかも結構高価な値段で短期間で行ってくれるものというのは基本的には全部偽物だと思ってください。そこでこんな効果がありましたというのは大体サクラですので」

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