JTF翻訳祭(#JTF31fes)カセツウさん、テリーさん、佳月さんのセッションをリアルタイムで視聴。翻訳者のキャリアパスのどのステージにいる人にも刺さった内容だったのではないかと思います。
2022年10月8日土曜日
自分はなぜ翻訳をやっているのか
2022年10月3日月曜日
翻訳で食べていけるのかという話
ここ数日間、あるユーザーによるTwitter投稿がきっかけとなり、翻訳の時給の話や翻訳で実際食べていけるのか、といったトピックが話題になりました。私もTwitterで「#翻訳で生計は立てられます」というハッシュタグをつけて投稿するなどしてこの話題に乗っかりました。
確かに様々な要因が重なって「重労働×低報酬」になり、かかった時間で試しに割り算してみたら時給換算で数百円になってしまった、ということは実際にあると思います。でも、そういう場合があるからといって、翻訳業界全体がそうであるとか翻訳が儲からない仕事であるかのように一部の人から言われるのは放っておけないと思いました。
翻訳者はフリーランスの方が多いので、やりようによってはすごく儲かる人も全然儲からない人もいると思います。でも、先を歩いている私たち現役翻訳者たち自身が夢のない話ばかりして「参入障壁」になるべきではないと思います。
翻訳の仕事はバラ色だとは限りませんが、地獄ばかり見ているわけではありません。ああ本当に面白い仕事ができたなあとか、お客さんがものすごく喜んでくれたなあとか、ちょうどいい時に大きめの仕事が入ってきてくれて(経済的に)助かったなあとか、良いこともたくさんあります。
腕を磨いて営業活動もしてしっかりと顧客をつかめば受注の切れない翻訳者になれますし、自分にしかない売りがあれば高単価で条件の良い取り引き先をつかむことも夢物語ではありません。
反対に、いくら翻訳の勉強をしても資格を取っても翻訳学校を卒業しても、仕事を獲得する努力をしなければ仕事は来ません。
翻訳の腕を磨くことと仕事を取るための努力は、どちらか一方だけでは仕事は来ません。両輪で努力していかなければ翻訳で食べていくことはできないと思います。
実力がある人も最初から実力があったわけではないでしょうし、有名な人も最初から有名だったわけではないと思います。
少なくとも今有名だったり実力者と思われたりしている人は、何も努力せずに今の場所にいるわけではないと思います。親が有名だったり生まれ持った特別な才能があったり幼少期に海外で過ごしたなどの幸運が重なった人も中にはいるかもしれませんが、そんなラッキーな人ばかりではないと思います。
ベテランにも初心者の頃は必ずあったわけですし、今翻訳スピードが速い人も駆け出しの頃は何をどう調べたら良いか分からず数百ワードの翻訳にまる一日かかったなんていうこともあったかもしれません。
私が一番言いたいのは翻訳を仕事にしているわけでもない人が、翻訳は儲かるとか儲からないとかテキトーなことを言わないでもらいたいということです。
翻訳を仕事にしたいと思っている人は、外野がやいやい言ってくるだけのなんとか知恵袋やなんちゃらGoo!とかで質問していないで、SNSで現役翻訳者をフォローしたり業界誌を読むなどして正しい情報を収集することをお勧めします。
2022年8月19日金曜日
機械翻訳に対する現時点(2022年8月)での私の認識
字幕翻訳スクールがAI字幕翻訳ツールを開発したというニュース
数日前に字幕翻訳スクールがAI字幕翻訳ツールを開発したというニュースが流れ、翻訳者たちの間に衝撃が広がりました。これを受けて翻訳者の堂本秋次さんがYouTubeで緊急動画を配信され、それを見たローズ三浦さんの発案で堂本さん、ローズさん、私の3人で機械翻訳の現状についてライブ配信することになりました。当日の告知にもかかわらず30名以上に方々にライブでご視聴いただき、その場でコメントもたくさんいただき成功裡にイベントは終了しました。(3人のトークイベントの動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=L09NEJLBNzU)
普段「機械翻訳についてどう思いますか」と聞かれるわりに回答にこれほど長い時間をいただけることはなかったので、司会の堂本さんが用意してくださったテーマでお2人と話すことで私自身としても改めて機械翻訳について自分がどう認識しているのか考えを深めることができて、非常に良い機会となりました。
話題は多岐にわたったので2時間半の長丁場となった議論を全部ここに文字起こしすることはしませんが、記憶が新鮮なうちに議論を通して感じたことを書き留めておきたいと思います。
議論で深まった自分の思考
まず、件のAI字幕翻訳ツールが登場したというニュースを受けて堂本さんが素早く出された動画がこちらです(https://www.youtube.com/watch?v=_qqDGSc0Yhg&t=6s)。これを見て、ああ、自分の言いたいことはほとんど言ってくれているなあという印象だったのですが、それを踏まえていてもやはり3人で話をして配信中の視聴者からのコメントも見ながら議論すると1人で話したり考えたりしている時よりもいろいろな考えが浮かんで自分なりに思考が整理されたように感じます。
同配信では以下のようなテーマについて話しました。
・機械翻訳の性能について
・機械翻訳は人間の翻訳の価値にどう影響するか
・ツールとしての機械翻訳の有用性とFP(フルポストエディット)やLP(ライトポストエディット)について
・機械翻訳だけで成り立つ業界は生まれるか?
・ビッグデータの取得経路について
・機械翻訳との共存に翻訳者は何ができるか?
機械翻訳を個人的に使う人と仕事として請ける翻訳者とでは見ているものが違う
最初のテーマで話を振られた時、3人とも現在の機械翻訳については「かなり精度は上がってきていると思う」という回答をしました。しかし、そのあとポストエディットに話が及ぶと「機械翻訳の出力をエディット(編集)することで必ずしも作業負荷は軽減されていない」という実感を口にしました。見る人には早速矛盾を起こしているように聞こえたかもしれませんが、このように話したのには理由があります。
例えば会社の中でDeepLやGoogle翻訳などを使っている人と、「MTPE(機械翻訳のポストエディット)」を案件として受注している翻訳者またはポストエディターとの間では見ているものが違うということです。
会社員や個人が会社や自宅で外国語で書かれた資料やニュース記事をDeepLやGoogle翻訳に入れた場合、「あ、結構いい訳が出るじゃないか」と感じるだろうと思います。ここまでは私も同じ感想を持ちます。(2016年にGoogle翻訳にニューラル翻訳が導入されて以来機械翻訳の精度は劇的に上がりました。)
しかし、機械翻訳に入れてみて「まあまあの精度だった」ものは、その場で「ああよかった。結構使える訳が出るじゃないか。じゃあこれをこのまま使おう」と言って資料やその他の文章に使い、それで終わっていきます。
翻訳者やポストエディターにわざわざ「お金を支払って」エディット(編集)して欲しい、というのは大半が「機械に入れてみたけどどうしようもなかったもの」です。主語がないものや固有名詞が頻出するもの、前後の文脈を知っていなければ訳せない内容のもの、構文が複雑すぎて機械では読み取れなかったもの等様々ですが、こういった「機械翻訳では全然意味が分からなかったからお願い」と、いわば駆け込み寺のようにして持ち込まれたものを私たちは現場で相手にしているわけです。このレベルになると、「ちょっと修正すれば済む」という話ではなく、ほとんどの場合全部消してイチから訳し直しになります。
このような現状を多くの人は知らないので、「翻訳者たちは自分たちの仕事がなくなると困るから『機械翻訳の出力なんかダメだ』と言ってるだけじゃないのか。DeepLの出力はこんなにも良いのに」と不信感を募らせるのだと思います。
しかし上で説明したように両者は見ているものが違うのです。そこが食い違っているから一般の人と翻訳者との間で機械翻訳に対する認識が食い違っているように感じるだけだと思います。
翻訳を職業にしていなくても社内に英語ができる人材を多く抱える会社も少なくありませんから、「機械翻訳にかけてみてだいたい良さそうだけど正しいかどうか不安だから念のため確認して欲しい。間違っていたら修正して欲しい」という案件もあるにはありますが、まれです。その程度の確認で済む話であれば社内で語学の堪能な人がチェックして微修正すればいい話だからです。多くの人はこの作業を翻訳者が担っていると誤解していると思います。
しかし、機械翻訳で良い偶然が重なって偶発的に良い訳文が出力されれば、社内の人がチェックして終わることが大半なので、そもそもその案件が市場に出てくることはほとんどありません。
多くの発注者が「だめだこりゃ」と思って人間の翻訳者に依頼してくる案件がポストエディットと名がついた訳し直し案件なのです。
機械翻訳が台頭してきたことによる翻訳者への直接的な影響として、翻訳市場に上がってくる案件の難易度が上がっていることが挙げられます。
2016年のNMT(ニューラル機械翻訳)導入以前は例えば「この商品の納期はいつごろになりそうですか」「先日はありがとうございました」などといった簡単な内容がクラウド翻訳サイトに翻訳依頼案件としてあがっていました。学生アルバイトや翻訳者としてのキャリアをスタートさせたばかりの人たちがこうした案件をクラウドで受注して小遣いを稼ぐことはそのころはまだ可能だったのです。
しかし、現在はそのようなシンプルな内容であれば一般の人が無料で使える機械翻訳サービスでそこそこの翻訳結果が得られるため、わざわざお金を払ってまで発注するケースはまれになりました。ですから一時期隆盛だったクラウドソーシングサービスからも簡単な内容の翻訳案件は姿を消すことになりました。
機械翻訳でどうにもならなかった出力を何とか生かして作業負荷を減らすなどということはできるはずもありません。機械翻訳で単価を減らされても翻訳者が楽になるのは「手を入れなくても使えるレベルの高精度の出力が多く含まれる」場合に限ります。
「意味は分かるけどこんな言い方はしないからゼロから良い表現を頭で考えなければならない」
「一応これで意味は合っているけど業界でこの表現でいいのか(客先でこの用語が使われているのか)確かめなければ使えない」
「固有名詞は一応訳されているけどこれで合っているのかどうかは裏が取れていないので会社のウェブサイトに行って確かめなければならない」
「なんとなくそれっぽく訳されていて原文を見なければこれで良さそうに見えてしまうけど原文と突き合わせて確認したら意味が全く違ってしまっている」
こういうケースは山のようにあります。
機械が訳した出力を確認して修正して欲しい、という場合、訳文だけを見て直しているわけではなく原文と突き合わせて正しく訳されているか確認しながら(正確性を担保)、日本語の文章として(あるいはその他のターゲット言語の文章として)読みやすいように編集する(流暢性を担保する)作業は、インターネットでの調査、それを含めた原文の理解、ターゲット言語で読みやすい文章を再構築するという工程を通りますから通常の翻訳と何ら変わらないのです。(それどころか、機械の出力を確認しなければならない分、通常の翻訳より作業負荷は大きくなります)そこを「ポストエディットなんだから安くしてよ」と言われても単なる値切り行為としか感じられないため、多くの翻訳者がポストエディット案件を敬遠するのです。
翻訳者が「機械翻訳のポストエディットで作業は楽になっていない」というと「本当は楽になっているのにお金が欲しいから機械翻訳の出力がまずいとおおげさに言っているんじゃないの」「翻訳の仕事を機械に奪われたくないからポジショントークをしているんじゃないの」と言われるだろうと思っていたので、どう説明すれば一般の人にもわかってもらえるのだろうか、とずっと頭を悩ませてきたのですが、今回配信の中で自分がふと発した「一般の人と我々では同じ機械翻訳と言っても見ているものが違うんですよ」ということでかなり説明がついたのではないかなと思っています。
良い文を良いと思う人が減れば減るほど翻訳文化が死んでいく
8月16日の動画の中で堂本さんがおっしゃっていた「良い文を良いと思う人が減れば減るほど翻訳文化が死んでいく」という言葉が印象的だったのですが、本当にその通りだなと思います。原文を正しく解釈して原文が伝える内容を等価のまま訳文に反映させるという翻訳の仕事には思考を伴います。しかし、機械は過去データから似たようなケースを導き出して「たぶんこれなんでしょ」という結果を偶発的に提示してきているに過ぎないので、「細かいことを言えばちょっと違うけどまあいいか、タダだから(安いから)」と妥協して使うことが増えると、別に一生懸命正しく翻訳しなくても良い、ということになり、世の中にテキトーな翻訳、めちゃくちゃな翻訳がはびこることになります。きちんとした翻訳をする翻訳者に正当な対価が支払われなくなると場合によっては生計が立てられず廃業する翻訳者も出てくると、まともに訳せる翻訳者が市場からいなくなり、究極的には翻訳文化が死んでいきます。
機械が訳しやすいような原文を書け、という流れが加速すると言語活動が狭まり、日本語文化が衰退していく
このまま機械翻訳の導入が加速していくと、現場で「機械が訳しやすいように原文を書く」という流れも加速していくだろうと思います。そのようなことは一部で現実に起きています。ご承知の通り機械は基本的にこれまで蓄積されてきたビッグデータの統計とそれをもとにした機械学習の成果からしか訳を導き出せないので、新たな概念、新たな用語、新たな内容は訳すことができません。仮に人間の翻訳者を一切排除して機械翻訳だけでも良いものが完成しましたという未来がきた場合、新しい言葉を入れると機械は訳せないから機械が訳せないような原文を書くのはやめてくれということになると、原文のライターに著しい制約が課されることになります。産業翻訳の場面でシンプルで分かりやすい説明が求められる現場ならまだしも、文学やエンタメ、新しい研究結果を伝える論文などで「機械が訳せる範囲の言葉しか使ってはならない」ということになると、大げさな話ではなく言語が衰退していきます。
英語に訳す前提で書いてくれ、となると単語やフレーズレベルではなく、英語に訳しにくいことは書かないように、言わないようにしなければならなくなって言語活動が縮小していきます。
新しく出てくるはずの美しい言葉、面白い言葉、感動する言葉をこれから先も守っていくために、「どんな概念が出てきてもなんとか訳をひねり出してみせます」という人間の翻訳者の存在は絶対に確保しなければ、日本語が貧しくなっていくのです。これは絶対に阻止しなければなりません。
ホンヤクこんにゃくは人類の希望
機械翻訳は実際、便利です。私も好きな韓国スターの発言を読みたくてGoogle翻訳を使いますし、ネット通販を使ったら意図せず中国から商品が送られてきて中国語のマニュアルしかついていなかったらスマホのカメラ翻訳機能を使って説明書を読むこともあります。
自分が学習していない言語を日本語に訳せるというのは素晴らしいことです。この技術の進歩を誰も止めることはできないですし、「まだまだ機械翻訳の性能は低いから大丈夫ですよ」などというつもりはありません。
そうではなくて、機械で訳せるものも多くなったけれど、「機械でどうにもならなかった部分」は必ずこれからも存在して、決してゼロになることはない、というなのです。
そこにまだまだ翻訳者が活躍する道が残されているとみるか、他の仕事へ徐々に軸足を移すのか、それとも「機械にできることは機械にゆずって人間は人間にしかできないクリエイティブな内容の翻訳に今後は注力していくべき」ととらえるのか、現状認識の方法は複数あると思います。
機械翻訳の精度を過大評価していると翻訳者が言う理由
「機械翻訳メーカーや販売者が機械翻訳を過大評価している」と翻訳者たちが言うと、「翻訳者たちは自分たちの仕事を守りたいだけなんだろう」と思う層も一定数いると思います。それは仕方がないことです。先にも述べたように、極めて幸運なケースでは、良い翻訳結果が得られることも多いからです。
しかし、仮にどこかの機械翻訳の営業担当者が仮に「弊社の機械翻訳は精度95%です」と言った場合、お金をいただいて仕事をする我々のところに回ってくる案件は「残りの5%ばかりを濃縮した苦い汁」なのだと説明すれば分かっていただけるでしょうか。
機械翻訳に入れてみたけどどうにもならなかったケースは一般の人も間違いなく目にしているはずです。
幸運にも上手く訳せている箇所は場合によっては「翻訳対象外」としてマーキングされて支払い対象から外されているというケースもあります。CATツール(翻訳支援ツール)などでは「セグメントをロックする」という機能もありますが要は「ここは訳さなくていいですよ」とは「ここは機械がうまく訳せているのでお金を払いませんよ」ということです。
苦み成分を濃縮した罰ゲームのお茶のようなものを称して「ポストエディット」として正規の翻訳料金の7掛け、5掛け、場合によっては3掛けといったような案件を打診されて泣く泣く受注している翻訳者も少なくありません。
私も時々MTPEの打診を受けるのですが数年前から基本的には断っていて、先日久しぶりに打診があったので「そろそろ精度が良くなったのか見てみたい」という好奇心もあって受注したところ相変わらず「だめだこりゃ」案件でした。しかも、多少これなら使えそうだなというセグメントにはすべてロックがかかっていて、どうにもならない出力結果ばかりの「機械翻訳結果」をため息をつきながら再翻訳しました。報酬は翻訳料金の6割程度でした。これから先も数年はMTPE案件は受けないと思います。
まとめますと私が言いたいのは、世間で思っているほど機械翻訳の精度が上がっていない、と私たち翻訳者が言うとき、一般の人が言う「結構良い出力が出るようになってきた」という場合の良い方の出力の話をしているわけではない、ということです。
翻訳者が自分の仕事を残したいから嘘を言っているわけではないことは最後にもう一度強調しておきます。
—終—
2022年3月1日火曜日
似ているけどニュアンスの違う言葉
先日、Twitterで以下のような投稿をしたところ、たくさんのお返事をいただきました。
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①「痛くも痒くもない」(特に何ら影響を受けない)と
②「痛みとか痒みとかは特にない」(例:予防接種の接種部位の話等) のように #似ているけどニュアンスの違う言葉 がありましたら教えてください。今度ブログ記事でまとめさせていただきたいです。2022年2月20日日曜日
雇ってもらう先を探すのではなく、自分の商品を売る先を探すという視点で考える
■ 翻訳者と顧客は雇用関係にない
翻訳者が仕事を探すとき、まずは求人サイトに行きますが、そしてそれはアクションとしてひとつも間違っていないのですが、残念なことに無事に翻訳会社に登録を果たしてもそれがすぐに仕事に直結しないことがあります。
誤解されやすいのですが、フリーランスの翻訳者が翻訳会社に登録を果たしても、それだけでは両者の間に雇用関係は発生していません。契約書を交わし、秘密保持契約などを済ませたら、あくまで「次から何か頼みたいことがあったらいつでも頼める」状態になっただけです。
顧客は一度頼んでみて気に入らなければ別の人に頼みますし、翻訳者も一度頼まれたからと言って次からも絶対に継続案件を受注しなければならない義務もありません(そういう契約になっている場合を除きます)。
たとえて言うなら、新たに知り合った人とLINE交換をして、「またそのうちランチに行きましょうね」とあいさつ代わりに言って別れる状況と似ています。連絡先が手に入ったので、どちらかから誘えばランチは実現しますが、日にちを決めたわけでも店を予約したわけでもないので、お互いに何もしなければ何も起こらない、という状況と同じです。
これに対して、正社員や契約社員、派遣社員という形態で雇用されていれば、平日午前9時から午後5時まで決まった場所に出勤して翻訳作業をするか在宅勤務でも同様の勤務時間に翻訳作業に従事するなど、雇用契約が成立した後からすぐに仕事が発生します。
そうではないフリーランスの翻訳者にとって、「翻訳会社への登録」はあくまで「今度頼む時があったら頼みますね」という、ランチの口約束と同じ状態に過ぎず、継続的な仕事発注に結び付けるにはもうひとつ別の視点が必要になります。
■自分という商品を顧客という消費者に売るという視点で考える
よく仕事が来ている翻訳者のことを「売れっ子翻訳者」と呼ぶように、フリーランスには売れている人と売れていない人がいます。その違いは何かというと、必ずしも日ごろから営業活動をめちゃくちゃ必死でしているかどうかの違いではなく、シンプルに「自分の魅力が顧客に十分に伝わっているかいないか」だと思います。営業など一切していないのに、口コミで評判がどんどん伝わって、仕事がいつも途切れない翻訳者もいます。
魅力が伝わるかどうか以前に、まず「自分の存在が知られていない」翻訳者もいます。どこで売っているか分からない商品を消費者は買うことができないので、「ここで売っていますよ」と宣伝する必要があります。それが各種ディレクトリなどへの登録や自分のウェブサイト作成などにあたると思います。
また、宣伝は十分なのに一度発注が来ても二度目がない、という場合は残念ながら商品に魅力がなかった可能性もあります。「義母と娘のブルース」というドラマをご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、わざと客がよく通る時間帯にパンが焼きあがるようにして匂いで客を引き寄せても、結局パンが美味しくなければリピーターはこない、むしろ宣伝した上に美味しくないパンを売ると「あそこのパンは美味しくない」という印象を持たれてしまって次から売れない、ということがあります。
宣伝するなら良い商品を用意しなければならない、というのがまずはフリーランス翻訳者の課題です。
「なぜ雇ってもらえないのだろう」と考えるのではなく、「自分の商品はなぜ売れないのだろう」というマーケティング目線で考え始めると、現在の自分にとっての課題が見えてくるかもしれないと思います。
■翻訳者にもマーケティングの視点が必要
そのことに改めて気づいたのは、先日(2022年2月3日)私のInstagramアカウントでインスタライブを行った際に、そのイベントにタイトルを付けたときのことです。そのライブの目的は翻訳者志望者から翻訳者への質問を募り、複数の翻訳者でその質問に答えるというものでした。
マーケティングに詳しいある方と一緒に企画していたので「何かキャッチ―なタイトルをつけて欲しい」と頼んだところ、「翻訳者のたまごをあたためよう」というタイトルが出てきました。
これは素晴らしいと思ってそのタイトルを含めて事前告知したところ、想定を超える数の方に視聴いただいて、イベントは大いに盛り上がりました。
それまでにも翻訳者志望者や学習者を対象にして翻訳者が質問に答えます、という機会はいろいろと作っていたのですが、音声SNSアプリのサービスでルームを開いてみてもいまいち質問者が現れず、アドバイスできる翻訳者ばかりが集まってイベントが終わってしまったこともありました。
今回は新たにInstagramという媒体を使ったことの効果もあったかもしれませんが、私はこの時にタイトルの偉大さ、キャッチコピーの大切さを改めて思い知りました。
私が翻訳者志望者の人たちの質問を拾いたい、それに答えたいという思いを持ったのは、このブログでもかねてから警告を重ねている高額な悪徳翻訳講座に引っかかって欲しくない、見えづらい翻訳者への道を示すことができればそういう変なものに引っかかる人も減るかもしれないという思いからだったのですが、これまでどうすればそういう人たちから実際に質問を受け付けることができるのか、把握できていませんでした。
「翻訳者のたまごをあたためる」という温かいメッセージが「刺さるコピー」となって、今まで翻訳者と交流できる場を知らなかった人たちの目にまで届きました。イベントが終わってからも、「あのタイトルが良かったよねえ、ほんとに」とその人に何度言ったか分かりません。
フリーランス翻訳者が客先に自分の商品(「翻訳」)を売りたい場合も同じだと思いました。買ってくれる人に自分を見つけてもらうというマーケティングの要素が、翻訳者にも必要ではないかと改めて思ったのです。
■自分の魅力の棚卸し
そういう視点に立って自分の仕事を振り返ってみました。すると、「私の仕事には何の特徴もないし」「医療とか特許とかマーケティングとか、これと言って強みがない」と思っていたのですが、いろいろ考えているうちに私は以前製造業で社内翻訳をしていたことを活かせるのではないか、そして翻訳の品質を製造業の用語でたとえてみたら面白いのではないかということを思いつきました。
私がいつも翻訳の際に心がけていることは「ちゃんと意味が分かる文章になっているか」ということでした。
そのためにはインターネットを使った事実の裏取りリサーチや幅広く辞書で調べること、リサーチで得た情報から論理的に推理をして話の流れを見落とさずに訳していくなどの工夫が必要なのですが、分野をひとつに絞らずいろいろ受注している自分にとってもこれは一つの特徴になるのではないかと思いました。
そういう考えをいろいろとめぐらせているうちに「意味が分かる翻訳」という言葉がふと浮かんだのですが、すぐに「当たり前やないかい!」という自分のツッコミの声が聞こえてきて、「当たり前品質」という言葉が頭に浮かびました。(当たり前品質とは製造業の用語です。これについてはまた後日別の投稿で話します)
翻訳の当たり前の品質とはなんだろう、翻訳の品質とはなんだろう、顧客に喜ばれる品質とは何だろうと考えながら、実際の翻訳作業をしていると、いつもより良い翻訳ができるような気さえしました。
我々職業翻訳者は普段一生懸命翻訳の仕事をして顧客に納めているので、こういったことは考えたことがなかった人も多いと思うのですが(少なくとも私の場合はそうでした)、「雇ってもらえるかもらえないか」ではなくて「自分の商品が売れるか売れないか」の視点で自分の強みを捉え直すと、見えてくるものもいろいろあるかもしれないと思った次第です。
2022年2月19日土曜日
一般の人に持たれているかもしれない翻訳者に対する5つの誤解
SNSで見かけた話や、普段私が感じている「翻訳者に対する誤解」をあげてみました。
①翻訳者って辞書なんて引かないんでしょ?
引きます。引きます。めちゃくちゃ引きます。そんなに引くんですか、って引かれるくらい引きます(すみません、このくだりはあるツイートからからパクりました。すみません〇さん...)。
知っているはずの単語にも知らなかった意味や語法があることがあります。英日・日英翻訳の場合、英和辞典・和英辞典でだけでなく、英英辞典、国語辞典、類語辞典、コロケーション辞典、百科事典など様々な辞書を引きます。
自分が知っている単語などたかが知れていますから、少しでも迷ったらすぐに引きます。
英日翻訳では私の場合、初めて見る単語に出会ったらまず英英辞典を引きます。自分が出会った文中での文脈に合いそうな定義に注目して読み、語義をつかんだ後で英和辞典を引き、そこに出ている訳語も確かめます。その後訳文に反映させたら、今度は国語辞典も引きます。その使い方で間違っていないか、原文の英単語のニュアンスを出すために使う日本語としてこれでいいか、確信を持つためです。さらに、もっと良い訳案はないかと、日本語の類語辞典も引きます。このように、知らない単語に出会った時私はざっと4種類の辞書を使います。
さらに言うと、英英辞典は3、4種類引きます。
私の場合、Oxford Dictionary of English、Oxford Advanced Learner's Dictionaryの後にネットのMacmillan Dictionaryを引くとたいてい解決するのですが、それでも文脈に合う定義が見つからない場合、American Heritage Dictionaryを引きます。Heritageを引くとたいていの言葉の意味が分かります。それでもない場合...(もっと続きますが今日はここまででやめておきます)
翻訳者なのに辞書を引くなんて頼りない、心配だ、と思いますか?逆に、辞書もまともに引かずに作成された訳文って、怖いと思いませんか?
②英語(またはその他の翻訳対象言語)ができる人なら(ちょっと訓練すれば)誰でもできそうだよね
これもよくある誤解です。ただし特別な才能がある人しかできないとか、ものすごく難しいから普通の人にはできない、とは言っていません。「ちょっとぐらいの訓練では」なかなかできるようにならない、私たちにもものすごく苦労した時期があったし今も毎日苦労している、ということです。
とくに英語などの欧米言語と日本語の間には言語構造に大きな隔たりがあり、例えば語順が違うなど、訳しづらい要素がいくつもあります。(英独や日韓などの比較的言語構造が似ている言語なら簡単に誰でもすぐできるのか、と言ったらそうでもありません)
言語間には文化的な背景の違いが必ずあり、便宜上使用している単語が仮に1対1で対応しているように見えても、その単語が持つ意味範囲は完全に同一ではありません。
例えば、英語のYes/Noは必ず「はい/いいえ」で訳せるとは限りません。「あり/なし」の場合もありますし「賛成/反対」の場合もあります。
英語のpleaseという単語も毎回「どうぞ」とは訳せず、時には「お願いします」とする場合もあります(し、場面によって訳し方は無限にあります)。
英語の"identity"と日本語の「アイデンティティー」では意味する範囲が微妙に違います(日本語の方が語義が狭くなっている)。
すべて文脈によって使い分ける必要があります。
翻訳講座などに通って訳し方のコツのようなものを教わることもありますが、出てくる題材は毎回違うので、どこかで習った手法ですべての翻訳案件に対応できるわけではなく、毎回悩みながら訳します。悩んだ末にひねりだした訳語というのは翻訳者にとっては宝物のようなもので、大事にどこかにメモしておいたりするほどです。
継続的に学習・訓練すれば、(正しい方向への)努力の量に比例して訳出は徐々に上手くなりますが、扱う分野の適性の見極めも必要ですし、実際の案件にたえうる実力を備えるまでには、比較的長い訓練期間が必要になるのがこの仕事です。バイリンガルなら誰でもできるわけではありません。社内のバイリンガルの人に気軽な気持ちで翻訳を頼むと、本人は影で泣きながら努力してやっているかもしれません。
③翻訳って英語じゃなくて日本語の勝負だよね(英日翻訳の場合)
これは半分正しいですが、半分間違いです。英日翻訳の場合、英語ができればできるというものではないという話はすでにしましたが、かといって日本語さえ上手ければ(語彙力が豊富であれば)できるというものでもありません。もちろん、原文を読んで理解した内容を適切な日本語に置き換えるための日本語力は必要です。業界で使われている定訳を使うこと、それを調査することも必要ですが、それだけでも足りません。
原文に書かれていることを過不足なくもう一方の言語に(※分かりやすく)置き換えること
翻訳を一言で定義するならこうなるかと思います。(※ただし、これも時と場合によるのですが、例えば文学作品などで難解であることや意味深であることが味わいである場合、翻訳で分かりやすくしてしまっては台無しです)
ただ、実務翻訳ではあまりそういうこと(味わいを残すために難解さも残して訳す)はないので、分かりやすく、読みやすくという部分は顧客からかなり求められる部分です。
これは単に外国語に精通していて日本語の文章力が高ければ誰にでもすぐにできる作業ではないと言えます。
海外生活が長かった人によくある現象ですが、日本人でも「日本語が出てこない」ということがあります。あることを言いたいのだけど適切な言葉が見つからない、というケースです。そういう時に翻訳者が適切な訳語を差し出すと「そうそう、それが言いたかった。やっぱりうまい翻訳者って日本語が上手いんだよね」と言うことがあるのですが、そしてそれは間違っていないですが、それだけではありません。
上手い翻訳者が出した日本語が上手いと感じるのは、それが「原文を表すのにこれ以上ないくらいピンポイントで対応した訳を差し出した」からです。原文を無視して洗練された言葉や格好のいい言葉を適当に作り出したわけではなく、「原文をしっかり理解した上で適切な表現をもう一方の言語のプールから引っ張りだしてきて紐がけする力」があったからこそ、その日本語(訳語)を導き出すことができたのです。英語力と日本語力にプラスして、その2言語間に「橋を渡す作業」(2言語間の「橋」の話は以前、ランサムはなさんの言葉に出てきました)ができているからだと言い換えることもできます。
要するに、日本語が上手いのは大前提ですが、その上手い日本語は「本当に原文が言っていることを正しく反映していますか」という話なのです。
SNSで以前読んだ話ですが、ある会社にどんな難解な英語でもたちどころにスラスラ訳してしまうすごい人がいたと。とても読みやすく、分かりやすい文章でみんなが感激していて、と。ところがある時偶然その人が原文を目にしたところ、訳文と内容がまったく違ったというのです。恐ろしい話です。
プロの翻訳者でこんなに極端な仕事をする人はまずいないと思いますが、社内で「ちょっと語学が得意な人」が訳すとこうなることは十分考えられます。
「日本語さえ上手ければ翻訳できるわけではない」というのはこういう意味です。
④とりあえず英語になってれば(日本語になってれば)イチから訳すより楽だよね?
翻訳者が言われるとイラッとする言葉のひとつに
「意味が分かればいいから(速く訳して)」というものがあります。依頼する人はそんなに細かい表現にこだわったりしないで細部は端折ってもいいから「書いてあることの概要をつかみたい」、できれば早くしてほしい、ということだと思うのですが、それを聞くと内心(それが一番難しいんだよっ)と思います。
意味が分かるように訳すことでエネルギーの8割は使っています。というより、訳出の前に、原文の意味を把握するところまでで翻訳作業に使うエネルギーの8割近くを使っています。一般の人には残りの2割の表現力に注目が集まってターゲット言語の運用能力に注目が集まりがちというのは上で述べた通りですが、実は前半の読み込みと調べものに時間がかかっているというのは先日の記事でも述べた通りです。
例えば学生アルバイトなどを使って翻訳してもらった場合、「ここちょっと意味が分からなかったのでとりあえず直訳しておきました。チェックして間違っていたら適当に直しておいてください」と渡された訳文があったとしたら、その部分は間違いなくイチから訳すのとほとんど同じ工数がかかります。
翻訳者や翻訳チェッカーが翻訳チェックをする場合、原文と訳文の両方を読んでクロスチェックを行います。訳文だけを読んで引っかかる部分だけ原文に戻って確認するやり方をする校正方法もありますが、通常、翻訳チェックと言えば原文と訳文の両方を読みます。
何度も言っていますが、翻訳の価値はまず「意味が分かること」です。読んでも意味が分からない文章は翻訳としての価値はありません。無地のTシャツよりプリントTシャツがいいよね〜、というようにデザインとしての文字としてなら「とにかく横文字になっていればいい」ということもあるかもしれませんが、翻訳の依頼が発生する場でそれはまずありません。翻訳を依頼する側は「意味を知りたくて」または「意味の伝わる文を作成して欲しくて」頼んでいるので、「意味分からなかったけどとりあえず適当に訳しました」という文章は、一旦消してイチから書き直しとなります。
書いた人に下手に気を使ってその意味の分からない文を多少なりとも生かして(残して)訳文を作成してくれなどと言われた日には、かえって時間がかかることさえあります。
プロの翻訳者が訳したものを別の翻訳者、あるいは翻訳チェッカーがチェックする場合は、基本的には「そのまま顧客に渡せるレベル」の翻訳をチェックするからこそ翻訳スピードの約2分の1から3分の1の時間でチェックできるのであって、「合っているかどうかも分からない、文法的な誤りも含まれているかもしれない、読んでも全く意味が分からない」文章に手に入れるぐらいなら、イチから訳した方がよっぽど早い、ということは少なくありません。
他人の訳には難癖をつけたくなるだけではないのか、と言われることもありますし、実際そういうこともあります。訳文のスタイルには好みがあるので、いくら上手く訳せたと思って出しても編集者に思い切り手を入れられるということはプロの翻訳者でもあります。
しかし、そういうレベルの校正や編集と、「そもそも意味を成していない奇怪な訳文もどきに手を入れる」ことには雲泥の差があります、ということは一度しっかり説明しておきたいと思いました。
⑤翻訳者たちって、自分の仕事がなくなると困るから新人のやる気をそぐようなことを言ってるんじゃないの?
全くの誤解です。仕事はいくらでもあります。きちんとした仕事をしてくれるのであれば、それこそ言っていただければ仕事先もご紹介できます。翻訳者の手が足りていない、この業界は慢性的な人手不足だ、などと言いますが、翻訳をやってみたい、翻訳者志望者は昔からたくさんいます。
しかし、上でも述べた通り「ここ間違っているかもしれないので違っていたら直しておいてください」とか「ここ分かりませんでした」などと言うような学生アルバイト気分の人には後始末が大変なので仕事を出せないのです。
ちゃんと訳してくれる人がいるなら訳して欲しい、翻訳待ちの資料や作品は世の中に膨大にあります。腕のいい翻訳者を確保できるなら、「あれも訳したいこれも訳したい」と思っているが、訳せる人がいないから市場に出てきていない、という仕事もおそらくたくさんあると思います。(企業内の独自用語や専門用語を社外の翻訳会社に発注して訳してもらうには機密上の問題があったり、そもそも専門的すぎて外部の人には訳せないこともありますが)
仕事がなかなか来ない人から見ると決まった量のパイの食い合いで、仕事は早いもの勝ち、先にありつかないと取られてしまう、という世界のように感じるかもしれませんが、それも誤解だと思います。
仕事が来ない人はおそらくコスパが合わないからです。厳しい言い方になってしまいますが、払うお金以上の価値が感じられないから注文が発生しない、ということだと思います。これは市場原理です。(実力があるのに仕事と結びついていない人はマーケティング不足の可能性もあります。これについては後日別の投稿で話します)
上手で料金も良心的な翻訳者のところには、毎日徹夜したとしても受けきれないくらいの注文がコロナ禍以降でも集中しています。私が知っている翻訳者の方も、例外なく毎日忙しいと言っています。これは自慢とかそういう話ではなく、単にコスパがいい商品はよく売れている、という単純な市場原理の話です。
2019年から2020年にかけて大いに物議をかもし、このブログでもたびたび警告を発した悪徳翻訳講座の主宰者は受講生たちに対し、「ベテランの翻訳者たちは自分たちの仕事を奪われるのを恐れて翻訳は簡単ではない、と言っているだけだから気にしなくて良い」と指導していたようですがとんでもない誤解です。
むしろ、断っても断っても「そこを何とかならないか、お願いだあなたしかいない」と泣きつかれて困っている、そんなことを言われてももうこれ以上は受け切れないから泣く泣く断っているが、もっと優秀な翻訳者が増えてくれればいいのに、と思っている翻訳者はたくさんいます。
他にもたくさんの誤解がありますが、やはり一番に言えるのは繰り返しになりますが「翻訳は単なる言葉の置き換えではない」ということです。人間が原文を読んで考えて、自分の読書経験、職歴、人脈、人生経験のすべてをつぎ込んで訳しているのが翻訳です。翻訳者にモーションキャプチャーをつけて仕事ぶりを読み取ってAIに翻訳させることも、現段階ではまだできないでしょう。
長くなってしまいましたが、翻訳者の仕事を少しでもイメージしていただけましたら幸いです。
2022年2月18日金曜日
翻訳料金は「ぼったくり」ではない―カスタマーリレーションという考え方
■翻訳料金は高い?
「翻訳料金って(意外と)高いんですね」と言われたことのある翻訳者の方は結構多いのではないかと思います。見積りを出して欲しいと言われて出したら「えっ、結構するんですね」のような反応をされたことは、私も1度や2度ではありません。業界水準では私の単価は決して高い方ではないと思うのですが、翻訳サービスを使ったことのない人にとっては「紙1枚で〇千円もするの」「たったこれだけで△万円もするの」という顔をする方もいます(メールでのやりとりなので顔の表情は想像ですが)。
翻訳の成果物はほとんどの場合がデータであり、食品や洋服や家具と違って「サービス」という無形の商品なので、価値が目に見えにくいところが特徴です。
先日Twitterにも投稿したのですが、翻訳というサービスの料金には一般に以下の作業費が含まれていると考えられます。
・原文を正しく解釈するための「読み込み」作業
・内容を理解するために周辺情報を「調査する」作業
・原文を正しく伝えるために訳文を「書く」作業
・訳抜け、誤訳がないように訳出した文章を「推敲する」作業
一般の人には上記の中でも後半の訳文を書く作業と推敲する作業しか思い浮かばないかもしれませんが、実は前半の「読み込み」と「調査」の方にこそ時間がかかっていることがほとんどです。
翻訳とは、ある言語の文字を別の言語の文字に移し替えることではなく、原文の「内容」をもう一方の言語で読み手に伝わるように書くことだからです。
翻訳とは
× 文字⇒文字(変換)
〇 文字⇒内容理解⇒イメージ化⇒言語化
このため、周辺調査が不十分で原文への理解が不十分なまま訳出すると、いまいち何を言っているか分からない、伝わりづらい、ピンボケした文章となります。
ですからプロの翻訳者は、分かる訳文を書くためにまずは自分が原文を理解する努力をしています。
こうしたプロセスを経て訳文が出来ていることは一般の人にはなかなか想像しづらいと思うので、「読んで訳すだけなのにどうしてそんなに時間がかかるの、どうしてそんなに高いの」と思われるかもしれないと思います。
しかし、翻訳者は機械ではなく人間です。上から材料を入れたら下からジュースになって出てくるミキサーのような機械ではないので、訳は自動では出てきません。
職人に作品を1点頼んだら「急ぎだから今日中に作って」とは言わないと思いますが、翻訳に関してはなぜか、原稿を読み終えたらその後すぐに訳出が始まり、訳し終えた文章が手から口からスラスラ出てくると思われがちなのですが、違います。
私たちは決して翻訳というスキルにあぐらをかいて翻訳料金をぼったくっているわけではないのです。鶴の恩返しの鶴のように、自分の羽根を1本ずつ抜きながら機織りをしていると言ったらオーバーですが、かなりのメンタルエナジーを費やして訳文を制作しています。
■そんなの知らんがな?!
ただ、このように、顧客の目から見えづらい訳文制作の苦労の話をしても、「翻訳料金が妥当である」ことの主張としては弱いかもしれません。ですから、結婚式の見積りや引っ越しの見積りのように、「何にいくらかかっているから全体でこの値段なのか」という見積の内訳を細かく提示するのも、ひとつの顧客サービスと言えるかもしれません。
たとえば、引っ越し屋さんに引っ越しを頼んだら10万円だと言われて高いなと感じたとします。ただ、それは梱包サービスも一切お任せするパターンの場合の話で、自分で梱包作業を行う場合だと6万円ですと言われたら、人によってはじゃあ梱包は自分でやりますと言う場合もあるでしょうし、いや、忙しいし大変だから梱包もやってくださいという場合もあると思います。
この時に梱包ありの10万円だけを提示されたら「高いな」と思っても、梱包なしだと6万円だと分かった上で、あえて「それもやってもらいたいから」梱包ありの10万円の方を選んだとしたら、不思議と10万円は高く感じなくなると思います。
これと同じように、この一連の翻訳作業には何が含まれているからこの値段なのかと、示すことで顧客の理解を得ることができ、顧客との信頼関係が深まるのではないかと思います。
翻訳料の見積内訳の例:
単価 数量 価格
・英日翻訳『(資料名)』 ◆円 〇〇ワード △△円
・翻訳校正費 ◆円 〇〇ワード △△円(翻訳チェックを入れる場合)
・文書作成・レイアウト作業費 1式 △△円
・特急料金(当日納品) 1式 △△円
※「英日翻訳」には原文資料の周辺調査費も含みます。※価格には消費税は含まれません。
特急料金の設定がある翻訳会社も最近少なくなりましたが、恐らくですが顧客に請求しづらいという現状があるからだと思います。
しかし、急ぎの場合ならいくら、急がないならいくら、と値段を分けることで、急がない場合の料金を安く設定することもでき、顧客はその選択肢から選ぶことができるので、かえって顧客満足につながる可能性もあると思います。
Amazonでもお急ぎ便は高いですが、通常配送なら少しお安くなりますと言われたら通常配送にする人もいるように、翻訳でも急ぎでない場合は少しお安くなります、というふうに納期で価格を分けるようにすれば「急ぐことは別料金」という認識がお互いの中に定着するのではないかと思います。そうすれば毎回毎回無茶な納期で疲弊することもないのではないか、と少し考えたりしています(最近そのように考え始めたところなので、納期による価格変動制はまだ実際には導入していません。今後の努力目標です)。
これまで翻訳料金は「何にお金がかかってこの値段なのかが分からない」というブラックボックス的要素も大きかったのではないかと思います。料金体系を透明化することが、顧客満足―ひいてはカスタマーリレーション(顧客との良好な関係を維持するために行う体制づくりやそのための努力)という考え方につながっていくのではないか、と思います。
2022年2月15日火曜日
翻訳サービスが二極化していくなかで
機械翻訳の導入が進み、翻訳サービスの価格の下落圧力が進むなか、我々職業翻訳者もこの仕事を続けていくにはなんとかしてこれで生計を立てていかなくてはならないので、色々なことを考えなければならない時期に来ていると思います。
我々翻訳者の立場で言うと、骨の折れる仕事をしているのだからそれに見合った報酬が欲しいのですが、サービスを購入する顧客の立場で言うと、より安くサービスを提供して欲しい、そういう(企業)努力をして欲しい、つまり、より高い品質の翻訳をより安く買いたい、と考えるのは当然の欲求だと思います。
すでに機械翻訳の導入が進んでそれがかなりマッチして機能し、機械翻訳の出力を人間が手直しするいわゆる「ポストエディット」(MTPE、Machine Translation Post-Editing)が上手くいって翻訳の「コスト削減」が進んでいる事例もかなりあると聞きます。
一方で我々職業翻訳者は「翻訳はコストではない、信頼できる翻訳サービスを使うことで顧客が増えることもある。翻訳は投資だ」と考えます。これも間違いではなく、機械翻訳をろくに手直しもせず使って悲惨な結果になっている事例も山のように見聞きします。
とはいえ、予算のない顧客が「出せる予算の中で最良の品質の翻訳サービスを購入したい」という場合、いくら良い翻訳でも高すぎれば頼めない、ということになります。
そういう時、どうするのか。同じような品質を提供してくれる翻訳会社でもっと安いところはないかと必死に探すのだと思いますが、そんなに簡単には見つからないでしょう。翻訳会社も良い翻訳を提供するには良い翻訳者を確保しなければならず、良い翻訳者を確保するにはお金がかかるからです。
顧客は何らかの形で妥協を迫られることになります。
■もしかしたらまともな翻訳が上がってこないかもしれないがとにかく安いところに賭けるような気持ちで一度頼んでみる。
■いつもの翻訳会社や翻訳者に頼む量を減らす(一部だけ頼んで他は社内で何とかする)。
このどちらもできない場合は
■いつもの翻訳会社や翻訳者に「安くしてくれないか」と頼む。
というパターンもあるかもしれません(断られると思いますが、何とかしてくれるところも中にはあるかもしれません。そういう時は影で翻訳者と翻訳会社の中の人が泣いています)。
頼みたい翻訳の量は減らせなくて、予算もないという場合、顧客は仕方なく安い翻訳会社に流れるかもしれません。結果、とても満足だとは言えないにしろ、「まあまあこれぐらいならいいか」という程度の翻訳が得られたらまずまずの結果として、次からもそこを使い続けるかもしれません。予算と品質のせめぎ合いですが、最終的には予算的にも品質的にも一番妥協できるラインに収束していき、翻訳サービスを提供する側は徐々に二極化していきます。
実際、この「二極化」はすでに進んでいると思います。
機械翻訳の精度の向上とともに、コロナ禍の影響も手伝って翻訳業界に参入したい人たちが増え、安く働いてくれる人を大量に抱え込んで「短納期・低単価」で勝負する大手の翻訳会社も増えています。
一方、短納期・低単価から脱却すべく、「うちにしかできない翻訳」を掲げて高品質で勝負する「ブティック型」翻訳会社(翻訳者)を貫くという路線でサービスを提供しているところもあります。
「安いのが良ければそちらに行ってくださいな」「うちは高いですが品質は良いですよ」
この極端な二択から顧客は選択を迫られる事態となっています。
「まあまあの品質でまあまあの価格で出してくれるところはないのか」
という要望に対しても、そこそこの値段でそこそこの品質のものを出すところも、あります。
いずれにしても安ければ品質は悪いし、品質が良ければ高いしで、本当に顧客が欲しい
「安価で手に入る品質の高い翻訳サービス」は今のところ、入手困難というのが実情でしょう。
翻訳は労働集約型産業なので、良い仕事を短時間で大量に行うことはできません。
職人型の翻訳者が頭脳を使い、時間を使い、手間暇かけた成果物が「高品質翻訳」として高値で市場に出回っていきます。
ここを何とかして品質を保ったままコストカットできないのか、と各方面の技術者や研究者が切り込もうとしますが、実際に翻訳作業を行う熟練翻訳者の利害と衝突するため、上手く行きません。
翻訳者たちにも生活がかかっているので、1日の労働時間を何時間も奪われたうえ、わずかな報酬しかもらえない仕事からは逃げたいですし、将来的にもっと良い仕事をするために時間的にも金銭的にも余裕のある生活をしたいので、できるだけ十分な納期で高単価の仕事を獲得できるように各自が努力することになります。
熟練した翻訳者が低単価で受注するのは業界のために良くない、とか、翻訳単価はいくら以上にしようなど、さまざまな工夫やアイデアが叫ばれますが、翻訳者が待遇改善を求めれば求めるほど、市場のニーズから遠ざかるというジレンマに陥ることになります。
そこを改善しようとして機械翻訳の研究者や開発業者が翻訳者の皆さん使ってください、翻訳作業が楽になりますよなどと声をかけようものなら、機械翻訳の現状のひどさも理解している翻訳者たちからは嫌われることになります。機械翻訳の研究者や開発者たちも今こういったジレンマに陥っていて、先へ進まないのではないでしょうか。
これからは、翻訳サービスが二極化していくのは、ある程度やむを得ないことだと私は思います。機械翻訳の導入をどんどん進めていける分野、それが可能な分野ではいくら抗っても、もうその流れは止められないと思います。そういう分野でこれまで仕事をしてきた人はそうやって出力される(つまり機械翻訳+非熟練の翻訳者たちによるPE)の結果を監督し、品質を保つようなポジションでやっていくか、いっそのこと全く別分野へと方向転換する必要に迫られていくでしょう。
一方で、これだけはどうしても人間じゃないとダメだ、プレエディット(機械翻訳に入れるまえに主語述語をはっきりさせるなど機械が訳しやすく編集すること)やポストエディット(上で述べたように機械翻訳の出力を手直しする工程)ではどうにもならない、という分野も存在します。なくなりません。ただ、少なくなると思います。この少ない分野にフォーカスしていくのか、あるいは既存の翻訳対象文書や作品を「ここだけは人間に任せます」というふうに上手く切り分けていくことが可能になるのか。今後の流れに注目していく必要があると思います。
ひとつ言えるのは、こうして翻訳サービスが二極化していくなかで、もはや、「誰にでもできる仕事」もっと言えば「機械でもできる仕事」しかできない人は淘汰されるか、短納期・低単価で搾取されることになっていくだろうと思います。
私自身も例外ではないと思っています。日々の仕事に追われるだけだと、この変化についていけないのではないかと、焦る気持ちが頭のどこかにあります。
だからこそ、1日のうち、仕事に使える時間を100%案件の受注に使ってしまわないで、いろいろな情報収集や活動、ブログ執筆や勉強など、「私にしかできない何か」ができる存在になるための努力を続けていきたいと考えています。
翻訳者も、翻訳作業以外に「いろいろなことを考える」時間が今後ますます必要になってくるのではないか。私は今、そのように考えています。
2021年5月16日日曜日
仕事に集中できない時
どうしても集中できない時、いつも通りのパフォーマンスを自分に期待しないようにしています。疲れているので本当は休んだ方がいいのですが、そうもいかない時もあります。調子のいい時を100%として、100%のパフォーマンスははなから自分に期待しないことです。100%を目指すとなかなか机の前に座れません。いつまでも休憩しようとします。
ですから40%のパフォーマンスでもいいからとにかく仕事に取り掛かることです。その時、「仕事に集中できる音楽」などでは気分が上がりません。こういう時、集中するのは無理なので、ひたすら自分のご機嫌を取りながら机に向かいます。普段なら思考の邪魔になる日本語の曲は聞きませんが、自分を甘やかすのが目的なので、ガンガンに好きな曲をかけながらノリノリで仕事します。(私の場合は相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」)
飲み物は、甘いカフェオレ。チョコレートは健康にいいと言われる高カカオのやつじゃなく、思い切り甘いミルクチョコレートも用意できれば最高です。
とにかく手を動かすしかありません。一行でも進めなければこの仕事は終わらないのです。そうやって手を動かしているうちにだんだん乗ってきます。集中力が高まってくると、ガンガン流していた音楽が邪魔になってくるのでそうなったらお仕事はかどる系の音楽に切り替えます。
スピーカーに凝るのもいいですが、私は周囲の雑音を遮断したいのでイヤホンにしています。ヘッドホンでもいいのですが、長時間使っていると頭を締め付けて痛くなるので、イヤホンです。
とにかく、集中できない時は、集中力を自分に求めないことです。低い集中力でも、時間をかければいつもと同じ分量にまで到達します。時間はもったいなく感じるかもしれませんが、ゆるい集中で少しずつ進めた日の仕事も、翌日見直してみて、そう悪くないこともあります。自分にあまり過度にテンションをかけないほうがいいこともあります。これは人によりますのでお勧めできないタイプの人もいるかもしれません。
何か参考になるところがありましたら幸いです。
2021年5月15日土曜日
「森谷式翻訳カレッジ」のTwitter公式アカウントによる投稿が大炎上している件
5月8日、多くの翻訳者たちをブロックしていた「森谷式翻訳カレッジ」のTwitterアカウントがブロックを突如解除しました。それにより、これまでこの講座に疑念を持っていた翻訳者たちが一斉にコメントを付け始めました。
それに対してなんと森谷式翻訳カレッジ側は返信を始めました。自分たちも主張したいところは主張すべきと思ったようです。ところがその内容があまりにも業界の翻訳者を侮辱しているとして猛反発を食らい、現在もバチバチのバトル状態が続いています。
中でも最も炎上したのが5月12日のこちらのツイートです。
2021年3月10日水曜日
2021年2月20日土曜日
忙しい曜日
私は現在、国内の翻訳会社、海外の翻訳会社からほぼ半々でお仕事を受けています。海外の翻訳会社のうち、ヨーロッパが半分、アジアが半分です。ですから全体でいうと
日本国内 50:ヨーロッパ 25:アジア 25
という感じです。直取引のお仕事は今はほとんどありません。
2021年2月10日水曜日
「批判は嫉妬の表れ」
※ネタ投稿
B) 気になったのにその言葉忘れてもうてん? どうなってんねん、それは
2021年2月9日火曜日
翻訳をやめたいと思った時の話
2018年頃、今より低単価でちょっとめちゃくちゃな量の仕事をしていた時期があります。3日で8500ワード とか、2日で5300ワード とか。一度無理を聞いたらそれが当たり前になってしまって毎日毎日、朝早くから夜遅くまで仕事していました。
2021年2月8日月曜日
在宅翻訳アカデミーの派生講座についてまとめました
2021年1月10日日曜日
2020年12月22日火曜日
浅野正憲氏の「在宅翻訳アカデミー」の被害者の皆さん、泣き寝入りしないでください
浅野正憲氏の「在宅翻訳アカデミー」の被害に遭われた方、「騙された自分が悪かったのだから仕方がない」と諦めていませんか。「金額は痛いがこれも勉強代だった」と納得しようとしていませんか。
2020年11月7日土曜日
警戒すべき翻訳講座が新たに2つ登場
コロナ禍で注目される「在宅ワーク」と怪しい副業情報商材
新型コロナウイルスの影響で、仕事や将来に対する不安を抱える人が増え、さらに感染防止の意味でも「在宅ワーク」に関心を持つ人が増えています。
2020年10月28日水曜日
翻訳の仕事を始めるにあたっての初期投資
2020年9月15日火曜日
情報商材の悪質さは買ったことがない人にはなかなか理解しづらい
情報商材というのは1度でも買ったことがある人しかその悪質さについて本当には理解できないと思うのですが、実は私はずいぶん昔にアトピーが治るという情報商材を1万円ほどで買ったことがあります。
2020年9月11日金曜日
悪質な翻訳情報商材にご注意を!
今、コロナ禍で副業を探している人を狙った悪質な翻訳情報商材が問題になっているのをご存じですか。
去年の秋ごろから「英語力が高くなくても翻訳者になれる」「TOEIC500点でも大丈夫」「英語が苦手な方でもOK!」「最短40日でデビュー」などと安易な言葉を並べたてて30万円とか50万円の受講料を取り、その内情は「翻訳できるようになる秘密」でもなんでもなく、ただひたすら尋常ではない数の翻訳会社に一気に応募させたり(彼らの言葉で「絨毯爆撃」)、その際に自分の経歴を大きく膨らませて書くよう指導する(詐称することを暗示的に推奨するような)ものだということが漏れ伝わってきています。
2020年8月23日日曜日
翻訳者になるには 【翻訳者になるための情報サイトを運営しています】
・誇大広告が生む錯誤
・翻訳者になるための情報サイトを運営しています
・安易な道に誘われて、不正に手を染めて後悔しないでください
コロナ禍で在宅の仕事を探す人が増え、翻訳者志望者が増えている
2020年7月30日木曜日
次々と名前を変えながら翻訳講座ビジネスを続ける浅野正憲氏の「在宅翻訳起業コミュニティ」「翻訳の学校」「在宅翻訳アカデミー」の実態
2020年6月3日水曜日
TOEIC500点台で職業的翻訳者になれるのか
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詐欺だと警告されている講座を受講してしまう人が後を絶たない (※注: 2020年7月に講座の名称が変更されましたので当記事もタイトルを変更しました) 浅野正憲氏の翻訳講座「在宅翻訳アカデミー」「在宅翻訳起業」「翻訳の学校」が2019年の秋ごろから業界内で物議をかもして...
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コロナ禍で注目される「在宅ワーク」と怪しい副業情報商材 新型コロナウイルスの影響で、仕事や将来に対する不安を抱える人が増え、さらに感染防止の意味でも 「在宅ワーク」に関心を持つ人が増えています 。
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字幕翻訳スクールがAI字幕翻訳ツールを開発したというニュース 数日前に字幕翻訳スクールがAI字幕翻訳ツールを開発したというニュースが流れ、翻訳者たちの間に衝撃が広がりました。これを受けて翻訳者の堂本秋次さんがYouTubeで 緊急動画 を配信され、それを見たローズ三浦さんの発案...
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また出てきました。 AIに翻訳を任せれば「英語力不問」で翻訳家になれるという講座です。 実はこの講座は、 2019 年から 2020年 にかけて問題になった講座と同じ販促業者が後ろで糸を引いている講座です。以前問題になった講座については 2020年2月25日火曜日のこち...
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2018年6月に開講されて大いに物議を醸した「在宅翻訳アカデミー」(浅野正憲氏主宰)を運営していた「株式会社REGOLITH」がまた新たな講座を開きました。
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2018年頃、今より低単価でちょっとめちゃくちゃな量の仕事をしていた時期があります。3日で8500ワード とか、2日で5300ワード とか。一度無理を聞いたらそれが当たり前になってしまって毎日毎日、朝早くから夜遅くまで仕事していました。
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業界で今ザワついているあの件について私からも一言。 ちょっと話は横道に逸れるところから入りますが....。 数年前、海外からの依頼でしばらくの間チェッカーの仕事も時々受注することもあったのですが、「え、これって本当に日本人が訳したの?」と思えるほどひどい訳文が送られてく...
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はじめまして。 フリーランス翻訳者の浅野ユカリと申します。 結婚して子どもが生まれる前は企業内で通訳と翻訳の仕事をしていました。子どもが生まれてからは不定期に実務翻訳の仕事を頂いて、基本的に在宅で仕事をしています。 フリーランスの翻訳者と...