8-2 クラウドソーシングでの翻訳タスク入札
一方、Conyacではレベルチェックテストを受けていない翻訳者もいると書きましたが、中にはレベルチェックテストに合格した「スタンダード翻訳者」もいます。翻訳料金によってレベルが違いますから、利用者は予算によって使い分けるということになります。
クラウドで翻訳を依頼するのは、概して個人の方が多いようです。個人の依頼主にとっては特に、予算は重要な要素で、前述のGengoの価格設定が高いと感じる依頼主も少なくないようです。もっと安価な翻訳を求める依頼主は、「ランサーズ」や「クラウドワークス」に流れているようです。
翻訳の相場感に慣れていない人からすると、翻訳者が例えば時給換算して千円程度もらえるような価格では、分量に対して(翻訳料金が)高いと感じるようで、クラウド翻訳のサイトで依頼主が希望している価格は、翻訳者側の労力からするとちょっと泣きたくなるような価格です(時間給換算すると200~300円ぐらい)
そういう「泣きたくなるような価格」での翻訳は、忙しい翻訳者はほとんど引き受けられませんが、経験の浅い翻訳者は実績を積みたくて報酬度外視で引き受けるようです。そういうところで価格崩壊が起きるのではと危惧されますが、概して安い価格でも引き受ける翻訳者はレベルもそれなりであることが多く(まれにものすごく安い価格でハイクオリティの人もいますが、ああいう人はどうやって生計を立てているのでしょう)、それに懲りた依頼主は次からはレベルの保証された翻訳会社や翻訳者に依頼しているようですから、どんなサービスにも共通ですが、「価格=品質」の図式は今のところそれほど崩れていないようです。
ただ、クラウドソーシングのサイトは海外にもあり、例えばUpworkのようなサイトには、日本語を母国語としない日英翻訳者で優秀な人がかなりたくさんいます。そういうところに、日本語を訳しやすくリライトしてから依頼すると、かなり良い品質に上がってくるようで、今後英訳の需要に対しては、日本人翻訳者は価格面でも太刀打ちできなくなるかもしれません。ただ、難解な表現が多く含まれる日本語を英訳する場合は、一旦日本人が英訳したものを英語ネイティブスピーカーがリライトするという「王道」を経ないと、満足できる品質に達しないということも多いようです。
クラウド翻訳の世界での価格相場については、今がちょうど過渡期かもしれません。「ある程度リライトすれば読むには耐えうる」というギリギリの品質を、いくらぐらい出せば獲得できるのか、という依頼者目線に立った場合、おのずと相場が安定してくるだろうと思います。
2017年7月11日火曜日
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