2017年7月10日月曜日

第8章: クラウド翻訳と出版翻訳オーディション 8-1 Gengo

第8章: クラウド翻訳と出版翻訳オーディション
8-1 Gengo

「Gengo(ゲンゴ)」や「Conyac(コニャック)」という名前を聞いたことがあるかもしれませんが、この2つはクラウド上で翻訳の依頼と納品が完結するという「クラウド翻訳サービス」です。翻訳者として登録するより、依頼者として利用する人の間での方が、名前が浸透しているかもしれません。

Gengoは2008年に設立されたサービスで、東京に本社がある企業ですが、創業者であるCEOはMatthew Romaineという日本とアメリカのハーフの人です。


Conyacは2009年に株式会社エニドアという日本の会社によって設立された同様のサービスです。クラウドで直接依頼する方法と、別途コーディネーターが間に入って翻訳の受注と納品を請け負う方法と両方扱っています。


GengoとConyacの大きな違いは、Gengoには独自のレベルテストに合格した人しか登録できませんが、Conyacにはレベルテストを受けていない人(Light翻訳にのみ参加可能)も登録しているということです。

Gengoの翻訳は、業界の中でも激安という訳ではありませんが、ある程度以上の翻訳水準は期待できるのに対し、Conyacでは学生や翻訳学習者のような人も登録しているため、簡単な翻訳であれば非常に安価で発注できるという点です。

どちらも設立当初は画期的なサービスだと大変話題になりました。

Gengoの場合、

・まず、依頼者がウェブサイトを通じて翻訳を依頼するとクラウド上の案件ボードに掲示されます。
・任意の言語ペア(英→日、日→英、中→日、日→中など)の試験に合格している翻訳者が案件ボードにアクセスし、案件の内容と締め切り日時を確認して受注ボタンを押し、受注します。
・このように、クラウドを通じ、依頼者と翻訳者だけで翻訳の依頼と受注が成立するので、翻訳会社のようなコーディネーターが介在しません。世界中にいる翻訳者のうち、その時手が空いている人が対応するので、早い時は数時間で納品されます。

・依頼主のメリットはその単価の安さと納品の速さです。品質についても、それなりに難しい試験にパスした翻訳者が担当しているので、ある程度のレベルは保証されています。

・依頼主にとってのデメリットは、毎回同じ翻訳者に訳してもらえるとは限らない点です。一応、お気に入り翻訳者を登録できるシステムもありますが、その翻訳者が毎回案件ボードを覗いているとは限らないため、自分の案件担当してもらえるとは限りません。

・一方、翻訳者にとってのメリットは、自分の好きな時に好きな分量の案件をボードから選んで受注できることです。

・翻訳者にとってのデメリットは、価格が他より安いことですが、数年前に価格引き上げがあったので、今は一般的な水準となっています。

ただ、値上げの時期と呼応するように翻訳案件の数がグッと減ったような気がします。値上げ前は、仕事がいっぱいで翻訳者の数が足りないようで、同じ案件が何日もボードにあるような時期もありました。そうなると依頼者側には「スピード」というメリットがなくなりますので、Gengo運営側もやむなく値上げしたのだと思いますが、価格設定についてはも運営側も厳しいところだと思います。

やはり昔ながらの、コーディネーターが間に入って案件ごとに調整する翻訳会社のスタイルは、クラウド翻訳が台頭してもすたれることはないだろうと思います。

ちなみに私もGengoで英日の試験にパスしており、子どもが赤ちゃんの頃は細切れの時間にGengoの仕事を受注していましたが、最近では固定客の仕事で詰まっているので、あまりGengoの案件ボードを覗くこともなくなってしまいました。
 
しかし、これから仕事を始めたいという方や、細切れの時間を使って翻訳の仕事をしたい、という方は、Gengoのレベルチェックテストにトライしてみても良いかもしれません。

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