英単語と日本語の単語では、持っている意味の範囲がぴったりと一致しません。
例えば、英語の"please"という単語は日本語の「どうぞ」と1対1では対応しません。
文脈によっては「お願いします」や「~していただけませんか」という意味になります。
以前、アテンドをしたことのある外国の方でplease イコール「どうぞ」だと覚えていた外国人の方がいて、Would you ○○, please?という文脈の時にも常に文末に「どうぞ」をつけていたので、まあ、意味は分かるけどもなあと思い、
・何かを人に許可する時や手渡す時には「どうぞ」
・何かを人に依頼する時は「お願いします」
だよと教えたことがありますが、本人は「日本語って難しいですね」と(英語で)言っていました。
技術的な文書などでは基本的に同じ単語は同じ訳語を充てます。
同じ単語は同じ意味に使われていることがほとんどだからです。
ですから技術翻訳では同じ単語に違う訳語を使うのは「訳語の不統一」というミスになります。
しかし、小説などでは同じ単語が違う文脈で使われることもあり、そういう場合は違う訳語を出さなければならないのですが、実務翻訳のクセが抜けないと、同じ訳語を無理矢理使おうとしてしまうことがあります。
そういう時に、単語のもつ意味の範囲が、英語と日本語では違う、ということをよく思い出して、場面ごとに合った訳語を考えなければなりません。
文芸翻訳には翻訳メモリを適用しにくいのはこの辺りが理由だと思います。
過去の自分が訳した言語ペアが役に立つ場合と、引っ張られ過ぎるとあだになる場合とがあります。
そういう意味では英和辞典の訳語も、誰かがある場面でそう訳したものの断片である可能性があり、少しでも違和感があったら英和辞典の訳に引っ張られ過ぎずに、英英辞典から導き出した自分の訳を信じて出すことが必要な場合もあります。
そうやって悩みながら作った訳は、実は辞書になくてもネット上には定訳として上がっている場合もありますので、ここのところ同じことを続けて言っていますが英英辞典をよく参照することは大事です。
2017年10月26日木曜日
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