2017年10月3日火曜日

「分納」に対する私の考え方

短納期で大量の翻訳を引き受けた時、一日ごとに「できたところまで分納して欲しい」と言われることがあります。

翻訳者の立場としては、これは実は「できれば勘弁してもらいたい」リクエストです。というのも、翻訳作業というのは納品前に何度も推敲するのが通常という仕事で、推敲する中で「昨日訳したあの箇所もやっぱりこの新しい訳に揃えたい」という場面が何度もあるからです。

しかし、「分納」のリクエストに応えて、先に終えて送ってしまった分は、直すことはできません。どうしてもという場合は

・「何ページの何行目の〇〇という箇所を、昨日の訳出では●●と訳しましたがこれこれの理由で▲▲に直させてください。申し訳ございません。」


という説明書きと共に謝りながら訂正願う、というやりとりが必要になります。

ですから本当のところは「全部訳し切ってから送りたい」というのが世の翻訳者の要望だと私は思っています。

とは言うものの、エージェントの側にもクライアントに納品する前に「訳抜けと用語統一、誤訳のチェック」等の社内チェックをしなければならないという事情があることも理解できます。

翻訳者の中には「分納はお断り」という方もいらっしゃるようです。それはそれでポリシーだと思いますので、依頼主とのやり取りの中で成立している場合は、本来はその方が良いと私自身も思います。

ただ、私の場合は、「分納の依頼があったら向こうも急いでいるだろうから、何とか対応してあげたい」と思うたちで、そういう場合は私は以下のことに気をつけています。


・全体をざっと見て、何度も出てきそうなキーワードがあればチェックする

・キーワードの訳案は一旦決めたら変更できないので、慎重に考える。

・キーワードとその周辺の関連用語は手元のメモ書きに書き留めて、訳がぶれないようにする

そのあとは通常通りに訳出作業を進めていきますが、分納で納品してしまった訳については、「ああ、しまった、この訳の方がベターだった」と思っても、よほどのことがなければ「前に戻って修正」することは諦めます。

本当はそれは実に悔しいことなのですが、私は「スピードを優先して、エージェントにチェックの時間を余計に提供(するというサービスを)した結果だから仕方ない」と考えて割り切ることにしています。最初に決めた訳に揃えて最後まで走ります。

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